40代子持ちのクルマ好きが、愛車のBMW 320dツーリングを評価するとともに、ちょっとだけ日々を楽しくするクルマのある生活の話題をお届けします。

雪道でBMWを運転する際に忘れがちな設定のこと。

BMW

さて、ここ数回冬に備えた記事を特にディーゼルにスポットを当てて書いてきましたが、今日で1回区切ります。ですが、今日お話しする内容は意外と忘れがちですので、特に気に留めておいた方が良いかと思います。もちろん、これは自分に対して言っているのですが。

2014年2月の東京での大雪

豪雪地帯にお住いの方にとっては噴飯物ですが、東京では20cmを超える積雪なんて豪雪も豪雪、超豪雪です。

私も小学生の頃ではありますが特定豪雪地域の青森に住んでいましたが、その経験から言うと、雪国って降雪に対するインフラは東京都内の比ではありません。

除雪車を始め、融雪パイプや融雪剤の撒布といったハード面のみならず、クルマを運転する方のスキルや住民の雪かきに対する意識といったソフト面でも全く違います。

東京では上にあげた全てがないといっていいと思います。

2014年の2月、東京には2週連続で大雪が降りました。特に2回目の大雪では山梨県が全体として孤立状態になるなど、全国的に大きく報道されましたが、私はその報道の一場面で忘れられないシーンがあります。

それは、都内で大雪のため立ち往生したクルマが多い、と紹介した場面でした。場所は恐らく皇居付近の内堀通りで、あれは国道246号線へ分岐する三宅坂交差点だったと思います。

BMW7シリーズに乗ったマダムが、夏タイヤのまま乗っていらっしゃって、見事に三宅坂(名前の通り坂になっています)で立ち往生していました。

それを2人の若い警官が押しているのですが、うんともすんとも動きません。

よく見たら後輪が回転していないんですね。そこで警官が、「アクセル踏んでください!」と声を上げます。

それに対するマダムの回答が

「踏んでるわよ〜!」

この時はこのマダムも舞い上がって必死だったのでしょうが、顔から火が出るほど恥ずかしかったに違いありません。ですが、本当に恥ずかしい点は色々ありまして、

  1. これだけの雪の中無防備なクルマで乗り出したこと。
  2. そもそも雪道というトラクションを稼げない路面で、発進する際にBMWが推奨している設定を知らないこと。

です。1に関しては、まさかあそこまで積もると思わなかったというのもあるのかもしれませんので、同情の余地はあると思います。実際、最初の大雪の時は私もそこまで予想できずに買い物にクルマで出かけて慌てて帰ってきました。

しかし、2に関しては、個人的にはやめて欲しかったです。多分、あのテレビを見ていたクルマ好きの方は、「やっぱりFRは雪道はダメだな!」と断定したに違いありません。

取扱説明書にも書いてありますね。

何ページかはMYによって異なるかもしれませんが、雪道でチェーンを装着しての走行時にはDSC OFFボタンを1回押してDTCをONにすることが推奨されています。

DSC OFFボタンはシフトノブの右前方方向、ドライビング・パフォーマンス・コントロールのスイッチの前方にありますね。

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クルマが滑っているような絵の横に「OFF」と書いてあるボタンです。

これを1回押すと、DTC(ダイナミック・トラクション・コントロール)になり、メーターパネルにはこのように表示されます。

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パーキングブレーキの警告灯の右上に、ボタンと同じ絵が出てきます。そしてタコメーター内のシフトインジケーター部分には・・・

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このように「TRACTION」の文字が追加されます。

このモードが雪道を走るときに必要な設定として推奨されています。

ご参考までに、DSCボタンを長押しすると・・・

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シフトインジケーター内に「DSC OFF」と表示されて、完全にDSCをオフにできます。

この状態からは(DTCの状態からもですが)、DSCオフボタンを1回押すと、通常の状態に戻ることができます。

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なんでDSC OFFボタンでDTCにしなければいけないの?

DSCというのは、ごく簡単に申し上げると、「後輪のスリップを感知して個別にブレーキをかけたりして車両の動きを安定させる電子デバイス」です。

今、さらっと「後輪のスリップ」と言いましたが、このスリップは縦方向(進行方向と並行の向き)・横方向(進行方向と垂直の向き)の両方を含みます。

つまり、進行方向に対して後輪がスリップするときには、スリップしている方の車輪にブレーキをかけて、スリップしていない方へトルクを割り振って発進しようとします。

雪道では当然両方ともスリップしますよね。するとどうなるか。

最初にご紹介したマダムの7シリーズのように、全く前に進まなくなるんです。

これがDTCですとちょっと様子が違ってきます。DTCでは、多少のスリップは許容して前に進もうとします。通常であれば、これはサーキットなどで激しめにスポーツ走行をしたい方が、DSCの介入でスピードを落とされるのを嫌いつつも、最後の最後に大きなスリップをしたときには助けて欲しいときに使うモードです。

ということは、雪道で使うと、多少のスリップは許容する=後輪が発進の時に多少空回りしても強引に発進できるということなんですね。

以前の記事で申し上げたように、最近になって雪道ではFRがダメという論調になってきたのは、主にこのトラクションに関してでしたが、FF・4WDは雪道でもグリップ走行を前提としているのに対し、FRの雪道走行は修正舵を当てることが前提であるというお話をいたしました。

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つまり、多少のスリップを許容して発進し、多少お尻が振られるのは素早いカウンターステアで修正して走る、という昔ながらの運転になるわけですね。昔ながらというのは「古典的」というのではなく、昔はFR車ばかりだったという意味で申し上げています。

とはいえ、多少ならDSC ONのままでも大丈夫ですよ。

最初のご紹介したように完全に積もっている状態で夏タイヤであるならともかく、スタッドレスタイヤやチェーンなどを装着した状態であれば、そこまでツルツル滑るわけではありませんから、DSC ONのままでも大丈夫だとは思います。というか、スリップした時にカウンターステアを当てる自信のない私はそのようにすると思います。

ただ、滑る路面って、1回止まると発進できないんですよね。そんな時に慌てずに、DSC OFFボタンでDTCモードにして脱出するということは、知識として知っていると役に立つことがあるかもしれません。

では、今回はこの辺で失礼します。ありがとうございました。