ディーゼルの最大の欠点とされるのがレスポンスの悪さです。「BMWも例にもれずもっさりしている」と言われますが、ここには真実と誤解があるような気がしています。
天気の良い週末に青梅方面にドライブ!
最近は週末は気候の良い日が続いていまして、絶好のドライブチャンスですね。私はというと、子供の習い事の大会があり、青梅方面にドライブに行きました。
まあ、普通は圏央道で行くと思いますよね?ですが、私が頼りにするカーナビタイムは、八王子ICで降りて一般道を行くように指示しています。
指示された道路は、およそ東京都内とは思えないような長閑な道路。所々アップダウンやカーブもあり、比較的信号の感覚も長くて運転を楽しめる道路です。
良い燃費は低回転域から産まれる
私の愛車320dツーリングに代表される直噴ディーゼルターボは、驚異的なカタログ燃費の良さを誇ります。いえ、ディーゼルに限らず、最近のダウンサイジングターボエンジン自体が燃費がよく、かつパワーとの両立を可能にしていますよね。
低回転域での太いトルクを獲得しているダウンサイジングターボエンジン搭載車は、概してハイギアードで高速走行時のエンジン回転上昇を抑えることで良好な燃費を実現している、ということは知識としてお持ちの方も多いと思います。
この、「エンジン回転を低く抑える」のが、ダウンサイジングターボエンジンの燃費の良さのキモです。BMWも良い燃費のためにエンジンを低回転に玉津ことを推奨しています。実際、オーナー様も普段は2,000rpm以下で走行していることがほとんどではないでしょうか?
その領域から踏んでも「加速が悪い」
今更な話で恐縮ですが、エンジンというものは、そもそもある程度負荷がかかって回転していないとパワーが発揮されませんよね。「低回転域から圧倒的なパワー!」という言葉をよく聞きますが、厳密に言いますと、この時の「パワー」はトルクのことを指しています。
そして、ターボというモノは、排気ガスを利用してタービンが回転して加給します。ですので、低回転域で巡航しているところからアクセルをちょっと踏み増したくらいではタービンが十分に回らず、有効に加給されないんですよね。
これが、「ダウンサイジングターボはレスポンスが悪い」と思われてしまう理由です。
じゃあどうすればいいのか?
答えは簡単、もうちょっと高回転まで回してあげればいいんです。
例えば、320dで高速巡航していて、大体1,500rpmくらいの回転域だとします。ここからそのまま踏みますと、クルマ自体は苦しげもなく加速体制に入りますが、やはり加速が遅いです。あるいは、ガバッとアクセルを踏んでも、一拍置いてから加速体制に入ります。
じゃあ、こちらであらかじめその回転域よりもあげてあげればいいんです。そう、マニュアルでシフトするか、スポーツモードに入れるかですね。
私は気分によって使い分けています。今回はマニュアルモードを選択し、一般道で積極的にシフトして走ってみました。
すると・・・テンポがよくなって気持ちいい!しかもパワフル!
登り坂ではシフトダウンしてアクセルを踏み込んで速度低下を防ぎ、下り坂ではまたもシフトダウンして、今度はエンジンブレーキをかけるのに始まり、カーブに進入する前にもブレーキングしながらシフトダウンして脱出加速に備えます。こうして、エンジン回転を、必要に応じて2,000〜4,000rpmをキープするようにしました。
すると、またも私の中のMの記憶が蘇って来ました。最初はそういえば気軽にパドルを引いてシフトダウンしたがために、オートへの戻し方がわからなくってあたふたしたっけなぁ、と。
・・・いえ、そっちの記憶ではなくてですね(笑)。
マニュアルシフトを余儀なくされていた際の「テンポの良さとレスポンスの良い加速」の記憶です。
でもおかしい!と思ったあなた。
ディーゼルエンジンを形容するときによく使われる「低速域で太いトルク」「低回転域からでも苦もなく加速する」という言葉と矛盾すると思いませんか?
これは、私も時々当ブログの中で言ってしまっていますが、あくまでもターボが十分に加給している時の話です。ですので、8速1,200rpmくらいで90km/hで巡航中に、急に追い越し加速をかけようと思って踏み込んでも、まだ十分に加給圧(ブーストと言いますね)が上がっていないので、そのエンジン本来の性能は出しきれていない、ということですね。
さて、最近ではめっきり聞かなくなった言葉ですが、こういう状態を表現する言葉がありますよね。そうです。「ターボラグ」です。
ディーゼルターボのレスポンスが悪い!という方は、ディーゼルではなくターボラグのことをおっしゃられているんですね。だからこそ、先に申し上げたように回転をちょっとだけ高めに保地、十分に排気ガスが噴出されている状態でいると、すぐに十分なブーストを得られるのでレスポンス良く、テンポも良く運転できるわけです。
可変ジオメトリータービンでも完全には消せないんですね。
私が最初に320dツーリングに乗って感じたのはこの章のタイトルのとおりでした。BMWのディーゼルターボは最新技術が惜しみなく投入されておりまして、第3世代コモンレール式直噴システムに可変ジオメトリーターボと、さながら精密機械のようなエンジンです。
可変ジオメトリーターボというのは、簡単にいうと、昔よくあった大小二つのターボをつけたツインターボを、一つのターボで行なっていると思ってください。つまり、低回転域の十分にブーストが上がっていない領域では大きなタービンを回すための排気ガスの圧力が足りないので小さいターボをまわっして加給し、中〜高回転域で排気ガスの圧力が十分に高まってから大きいタービンも回す、という機構を持ったエンジンです。「シーケンシャルツインターボ」なんて呼ばれていましたね。
ちなみにですが、私がかつて乗っていたインプレッサWRXはシングルターボで、しかも大径のタービン一つというものでした。すでにシーケンシャルツインターボも出回っていた中で男らしい(?!)エンジンでして・・・典型的な「ドッカンターボ」でした。低速トルクの細さと言ったらなかったですね。思いクラッチペダルに負けて、冷間時にラフにクラッチをつなごうものならストンとエンストし、燃調も濃かったので、エンジンが中々再始動しませんでした。交差点で右折しようとして何度かこれをやってしまい、運転席の外から手押しで移動させたことが何回かあります。
私はこういうことを体験しているので、ディーゼルターボがレスポンスが悪い!という論調を見ると、「え?ターボラグだよね?それでも昔に比べると夢のようにいいけど?」と思ってしまいます(笑)。
これはディーゼルに限らず、ガソリンエンジンのBMWでも当てはまります。今のBMWエンジンは全てターボ付きですからね。
あ、ご参考までにですが、ターボラグを解消する手立てとして上の方でご紹介した。「エンジンを若干高回転に保つ」ということですが、そうするともう一つのターボエンジンの癖、「高回転で回すと燃費が悪い」というのも出てきます。直噴ターボですので、シリンダー内に「直接」噴射された燃料でかなり冷却されますから、爆発に使う以外の燃料まで用いて冷却していた昔のターボ車ほどではありませんが。
さて、いかがでしょうか?ディーゼルは燃費がいいからとスポーティな走行は諦めていたディーゼルオーナー様、一度積極的にマニュアルシフトを駆使して、エンジンの回転を高めに保って走ってみてください。ブレーキング・シフトダウン/アップとアクセル操作の全てを穏やかに行うのがコツです。ラフな操作をしてはいけませんよ。
そうすると自らの愛車に秘められていたパワーに驚くはずです。実際、320dツーリングでワインディングを走るのはすごく楽しいですよ。その楽しみは、最廉価モデルからMまで一貫して感じられる、ハンドリングだけではない楽しみです。そう、忘れていませんか?「BMW」ってなんのことか。
100周年ということもあり、あちこちでBMWの歴史を目にします。ディーラーでも大きなパネルを使用して展示していますが、ここではちょっと知られていないマメ知識、雑学・歴史編をお送りします。 BMWのエンブレムの由来 「そんなの知ってるよ」と[…]
では、今回はこの辺で失礼します。ありがとうございました。