今日、ネットでニュースを見ていたらふと目についたニュース記事がありました。そんなに深刻に考えたことはない方も多いかとは思いますが、ステアリングの保持位置についての記事です。昔の話になりますがちょっと思い出したことがあるのでご紹介します。
「9時15分」と「10時10分」
これは教習所でも習いますよね。要するに、ステアリングの直径上の真横を保持するか、そのちょっと上を保持するかということでして、それ以上の説明は必要ないでしょう。
基本的に、クルマのステアリングもそうした保持位置を想定しているデザインになっていますよね。3本スポークでも4本スポークでも、まず真横に2本が走り、下が真っ直ぐ1本か、斜めに2本かの違いだけです。
3本スポークはスポーティ
3本スポークと4本スポーク、どちらがいいというのはないのですが、一般的には3本スポークはスポーティなクルマに多いですね。
例えば、メルセデスは通常のモデルでは4本スポークでもAMGラインになると3本スポークですし、アウディも基本は4本でSラインは3本です。
翻って我らがBMWはというと・・・M Sportでなくとも3本。過去には4本スポークのステアリングもありましたが、今は全て3本ですね。さすがはスポーティさがウリのクルマです。こういう細かいところが、オーナー心をくすぐるんですよね。
実を言うと、この「3本か4本か」は、私が車種を選ぶ上ですごく大事なポイントだったりします(笑)。
「え?!そんなこと?!」って思われますよね(笑)。ホントです。決定打にならないにしろ、他がかなり良くても4本だとテンションが下がり、減点ポイントになります。繰り返しになりますが、いい悪いではないんです。完全に見た目の好みだけの話です。
脱線しましたね。さて、そんな私のお気に入りのBMWの3本スポークのステアリングですが、よく見ると、ちょっと盛り上がっているところがありますよね?
これは「サムレスト」と呼ばれていまして、名の通り「サム(親指)」を「レスト(休ませる、置く)」するところです。
つまり、BMWが、「ステアリングを握ったらここに親指を置いてね。」と教えてくれています。
これはi8ですが、シルバーの線が湾曲しているのでわかりやすいですね。
318i M Sport。
ALPINA B3も。
ここまできたら、ALPINA B5も(笑)。
残念ながらStandardにはサムレストがありません。これは318iのStandardです。
で、このサムレスト、言われた通りこの出っ張りに親指を添えると、見事に9時15分の位置で保持することになります。私は手が大きい方なので、大きなドイツ人サイズでもピッタリですが、もしかしたら手が小さい方は9時15分より少し上になるかも知れません。
と言うわけで、私は素直にBMWの推奨に従って、9時15分の位置で握っています。
10時10分が悪いわけではないですが。
私が読んだ記事では、教習所では今どの様に教えているのか、現役教官にインタビューしていました。
それによると、10時10分の握りは、元々はパワーアシストがない時代、ステアリングを切るのに力が必要だった時代に、力が入れやすいと言うことでステアリングの保持位置として教えていたものだそうです。
だからと言って、10時10分の保持位置を現代では否定するものではなく、背の高い人などはその方が楽だろうと。心臓より高い位置に腕を置いていると疲れやすいというデメリットもあるので、人それぞれだろう、と言うことでした。
これに対して、BMWドライバー・スクールのチーフインストラクターの菰田さんの本では、9時15分を推奨しています。菰田さんが教えるステアリングワークは独特なのですが理にかなっており、私はこの教えを守っているんですよね。
詳しくは省略しますが、要は緊急回避時を考えてのことです。考えてみてください。大きくステアリングを切って緊急回避をする場合に、あなたはどうステアリングを切りますか?
例えば左に大きく回避!と言う場合、左手で引いて切る方ってあまりいないのではないでしょうか?停車している時に、実際にステアリングを切らないまでも(据え切りは良くないですからね。)、可動範囲を確認してみてください。
この時、左手でステアリングを引いて切る動作をすると、下の辺り、太もものところで詰まってしまいませんか?ステアリングはせいぜい45度くらいしか回らず、実際にタイヤが動いてる角度もたかが知れたものでしょう。
本能的にこれをわかっているので、大抵の方は右手で「押し回す」はずなんです。
実際、私は若い頃にやらかしまして、免許取得後1年以内に違反点数3点以上累積したら受けなければいけない講習に参加させられました。いえ、参加させて頂きました(笑)。自宅から程遠い教習所を指定されたのですが、これが意外と面白くて役に立ったんです。
殆ど懲罰なので1日中隙間なくスケジュールが組まれていましたが、実技もありました。この中に、緊急回避トレーニングがあったんです。
教習車のマークⅡのセダン(よく見るハードトップではない方です。懐かしい!)で40km/hまで加速して正面のパイロンに向かい、直前で教官が「右!」などと叫んで、その方向に急転回してパイロンを避けるんです。教習所内の道路なのでそこまで広くはなく、その後すぐに反対に切って戻さなければいけない、という、今考えれば結構危ない実技教習でした(笑)。
これが、意外とみなさんうまくできないんですよ。初心者とはいえ、みんな免許持っているのに、ですよ?しかも違反点数が3点行くくらいなのでそれなりに運転も継続的にしている人達ですし、若いので反射神経もまだ衰えていないはずなのに。
今でも覚えていますが、私は「左!」とかなり遅めに叫ばれて、必死で右手のみで思いっきりステアリングを押し回し、その直後に左手で素早く切り返してクルマの向きを直進に戻しました。
車内に昼ご飯の時に仲良くなった人達が乗っていて、拍手してくれたのを覚えています。
こういう時には、9時15分の時の方が圧倒的にステアリングを大きく切れるんですよね。10時10分だったらどうだったのか?今であればあえて試してみようなどと思うのでしょうが、その時は流石にそこまで考えませんでしたのでわかりませんが、あそこまでうまく避けられたかはわかりません。
あ、念の為に申し上げておきますと、私の違反3点というのは、なんと「駐停車禁止場所での停車(違反点数1点)」を3回連続して取られた、というなんとも学習効果のない、おバカな理由です(恥)。
じゃあもっと下、4時40分とか持てばいいのでは?
それがそうでもないんです。
緊急回避の時って、手を素早く動かそうとするので、手を直線的に動かそうとします。「回してっ・・・と」なんて考えている余裕はありません。人間、素早く動こうとするとき、あるいは素早く動かそうとする時って反射的に直線的に動くものなんですよ。4時40分の位置から直線的に上に手を引き上げるのって、やりづらいです。恐らく、素早く切ろうとすると、引っかかると思います。
ですが、直進で保持する時はいいですよね。むしろステアリングを切らない様にしたいので好都合と言えます。これは、件のインタビューに答えていた現役教習所教官もおっしゃっていました。実際に高速道路を巡航するときなど、私もやることがありますし、読者の皆様でもそうされる方、結構いらっしゃると思います。
いかがでしたでしょうか?私も普段は意識していませんでしたが、このニュース記事を読んでハッとし、基本に立ち返ってもう一度自らの運転を省みようと思ったら、昔の記憶がまざまざと蘇って来たのでご紹介しました。
9時15分と10時10分、どちらが良いかはあなたの運転スタイル次第ですが、一度停止中に色々とシミュレーションというか、イメージトレーニング的なものをしてみるのもいいのではないでしょうか?
もちろん、緊急回避だけではなく、普段の扱いやすさや、リラックスする時はどうするか、など、色々な視点で見て見るのも大事かと思います。
では、今回はこの辺で失礼します。ありがとうございました。