先にBMWとメルセデスの中核モデルのデザインに関して触れましたが、現在はこれとは違う潮流もありますよね。今回はそちらに触れていきたいと思います。
中核モデルのデザインに関しては以下の記事をご覧ください。
クーペライクなデザイン
中核モデルが居住性を犠牲にせず昔ながらの正統派を踏襲しているのに対し、そういった観点から離れて、よりデザインコンシャスな方向性を打ち出しているのが最近のトレンドかと思います。
最近のこの分野はメルセデスがC219型CLSでブームに火を付けましたよね。
ですがこのクルマが発表されたとき、各クルマ雑誌がなんと言っていたかというと、「メルセデスらしからぬ」「メルセデスがジャガーを作ったようだ」。
そうです。この分野、つまり4ドアクーペ的なスマートなスタイリングはジャガーが先鞭をつけていたんですね。代表的なのはXJで、シリーズⅠからほぼ同じスタイリングを守り続け、現行のX350系でドラスティックにスタイルを替えましたが逆にクーペ色は強まったような気がします。
日本でも、古くはマーク2三兄弟に代表される「4ドアハードトップ」という分野がありましたよね。懐かしいです。
今では同様の4ドアクーペはBMWでも4/6シリーズにグランクーペとして設定しています。スタイリッシュな外観と、4ドアの実用性を兼ね備えた、大変魅力的なモデルです。
最近はSUVまで。
これはBMWがE71のX6で先鞭をつけた分野です。BMWではSAVと言いますが、SUVの4ドアクーペですね。
今となってはX6も第二世代になり、さらにX4、メルセデスではGLEクーペと、車種が拡大していっています。
ちなみにX4、日本ではあまり見ませんが、アメリカでは人気車種らしいですよ。
合理的ばかりじゃつまらない
合理的と定評があるドイツ人が、後席の居住性を多少犠牲にしてまでこうした4ドアクーペを作るのはなぜでしょうか?私もあまりよくわかりませんが、最近の日本車、特に軽自動車にヒントがあるような気がします。
軽自動車はあの規格内で最大の空間を確保すべく努力しなければならないので極端ではありますが、今やほとんどの軽自動車が非常に天井の高い、トールボーイ的スタイリングをしています。
これは、日本ではかつての4ドアハードトップブームで、ああいったクルマは後席の居住性が著しく悪いことに懲りて、現在のように天井を高くする傾向になっていると思うのですが、ちょっとお世辞にもスタイリッシュとは言えないですよね。
要するに、実用性を突き詰め過ぎると「カッコいいクルマ」でなくなっていく傾向にあるんです。
メルセデスがこうしたことに対するアンチテーゼとしてCLSを発表したのは、昨日までオシャレと無縁だった優等生が突然ファッションリーダーになったかのようで大変驚きましたが、メルセデスなりにクルマ好きをワクワクさせようとしてくれたのではないかと私は思っています。
今後はどうなるのでしょうね。
ドイツの4ドアクーペがどうなっていくのか、今まで通り中核モデルたり得ないものの、別の流れとして生き残っていくと個人的には思います。
現代の4ドアクーペは、アウディA5/A7スポーツバックやBMW4シリーズグランクーペのように、ハッチバック化されて実用性も付加されていますし、6シリーズグランクーペに至っては、乗降時だけは若干天井の低さを感じますが、乗り込んでしまえば後席も広々していて、居住性が犠牲になっていません。
私としても、こうした「カッコいいクルマ」にやっぱり憧れますし、こういうちょっとハズしたクルマがあるからこそ中核モデルも光輝くのではないかな、と思っています。
では、今回はこの辺で失礼します。ありがとうございました。