高齢者の重大事故の報道を見て思ったこと。

ここ数日、高齢者による重大事故の報道が続いています。このニュースを見ていると必ず出てくるのが、免許返納制度のことですが、私はちょっと実効性に疑問を持っています。

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免許返納はいいけど、その後は?

このタイトルが私の疑問そのままです。

公共交通機関の発達した都市部に住んでいるならまだしも、そうでない地域に住んでいる高齢者の方にとってはクルマは生活必需品とも言えるものです。

こういう方にとっては、免許を返納するまではクルマを運転してどこにでもいけたのに、免許を返納したらそれができなくなるという、生活スタイルの一大変化を余儀なくされます。

足腰も弱くなってきている中で、今まで行けたところに行けなくなるという変化を伴う免許の返納が大多数の人には受け入れられないというのは、当然といえば当然かもしれません。

実際、私の周りでも今までピンピンしてどこでもクルマで行っていた人が、ある日突然免許を返納したというのを聞いたことはなく、重大では無いにしても、どこかにぶつけるなどの事故を起こしてから返納を考えるというケースが多いようです。

そして大抵の方はこのように考えられていらっしゃいます。

「もう歳だからクルマを運転するのは危ないのはわかっているからなるべく運転しない。だけど何かの時のために免許は返納せずに持っていたい。」

実は問題の一面というのはここにあるのでは無いでしょうか?要するに、普段運転していない方が、いざという時に運転するようになって、昔どおりに運転しようとして事故を起こす、とが1点。

そしてもう1点が「いざ」という時のために、自分で運転していく以外の代替交通手段が無い、ということです。

自治体が色々と策を講じてはいますが。

自治体によっては、免許返納後にもらえる証明書を提示することで、公営バスの運賃の値引きや無料化を行っているところもあるようです。

ですがこれは先ほど述べた公共交通機関が発達している地域であればこそ有効なのであって、それ以外では使えませんよね。

タクシーなんかも証明書の提示で半額とかにすればいいんですけどね。もちろん、タクシー会社の経営も厳しい中、こうしたサービスを行っているタクシー会社には国や自治体から補助金を出すことが必要ではありますが。

ということはその財源が必要になりますよね。そうすると、高齢化社会で労働人口が少なくなっていく中ではこれも絵に描いた餅にすぎません。

完全自動運転なら解決できる!のですが・・・

個人的な意見を言わせていただくと、いわゆるレベル5の完全自動運転が実現されればこの問題は解決できることだと思います。

つまり、免許証は依然として持ち続けるのですが、完全自動運転車を高齢者がそ有することによって、重大事故を防げるようになる、と。

ですが、この完全自動運転は、技術的な問題以外でも容易には実現できそうでは無いんですね。

ちょっとここで一度、自動運転のカテゴリーを見て見ましょう。これは、米国SAEの5段階を、BMW流に要約したものということです。

レベル1=フットフリー

自動ブレーキやクルーズコントロール。アクセルとブレーキの操作からドライバーが解放される。

レベル2=ハンズフリー

車線維持が可能となるので、ドライバーはステアリングから手を離すことが可能。

レベル3=アイズフリー

部分的にシステムが完全制御運転をするので、ドライバーは運転視界から目を離すことが可能。

レベル4=ブレインフリー

人が関与しなくてもクルマ側で運転操作をするので、ドライバーは目も頭もサブタスクに専念することが可能。

レベル5=ドライバーレス

(出典:CAR GRAPHIC12月号)

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私の愛読誌CGからの出典ですが、別のページにはまた、米国NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)の定義するレベルが掲示されています。

自動運転レベル 概要 注(責任関係等) 左記を実現するシステム
レベル 0 ドライバーが常に加速・操舵・制動の全ての操作を行う。 ドライバー責任
レベル 1 加速・操舵・制動のいずれかをシステムが行う状態 安全運転支援システム
レベル 2 加速・操舵・制動の複数をシステムが行う状態 ドライバー責任

※監視義務およびいつでも安全運転できる態勢

準自動走行システム 自動走行システム
レベル 3 加速・操舵・制動を全てシステムが行い、システムが要請したときはドライバーが対応する状態 システム責任

※特定の交通環境下での自動走行(自動走行モード)

※監視義務なし(自動走行モード:システム要請前)

レベル 4 加速・操舵・制動をドライバー以外が行い、システムが要請したときはドライバーが全く関与しない状態 システム責任

※全ての行程での自動走行

完全自動走行システム

(出典:CAR GRAPHIC12月号)

いかがでしょう?

高齢者の事故には色々と原因があるかとは思います。体が固いが故に、バックの時に体をひねると足の位置がずれてしまう、など考えられますが、恐らく一番問題になるのは、「認知・判断」の部分ですよね。

となると、いずれの基準でも完全自動運転でなければ高齢者向けにはならないわけです。

ところが。

ここに自動車の国際規格というか、世界中でこうあるべきと定めているジュネーブ条約というものがあるらしいのです。私たちが国際免許を取得して海外でも運転できるのは、日本がジュネーブ条約加盟国であるからなのですが、そこで、

「つねにドライバーが操縦を行い、安全のために注意を払わなければならない」

という規定があるそうなんです。

これとNHTSAの表を見比べると、気づくことがあります。そもそも、表の中で、完全自動運転中はシステム責任となり、ドライバーに責任が発生しない=メーカー側の責任を問われることに驚いた方もいらっしゃるでしょうが、私はジュネーブ条約の規定を逆に解釈すると、「完全自動運転者にはドライバーがいない」ことになるのでは無いのかと思っています。

つまり、全責任はシステム開発サイドにあるということです。

自動車メーカー及び関連部品メーカーが受け入れるでしょうか?

タカタのエアバッグ問題を見ても分かる通り、万が一システムに瑕疵があることが原因で事故が起こったとすると、全責任がメーカーに被せられ、同様の事例が多発したとすると巨額な損害賠償が発生します。

そうすると、完全自動運転システムをいち早く開発したメーカーが先行者メリットを享受するどころか、むしろ会社の存亡の危機に立たされる可能性の方が大きいんですよね。

これは理論や技術ができても、中々完全自動運転までの道のりが遠そうです。

ですがこれから高齢化社会を迎える日本、そんなのんびりともしていられないのでは?

今現在市販されている車で、両方の表でレベル2以上のクルマはありません。

完全自動運転が遠いのであるならば、まずは手っ取り早く運転システムを安全に近づけるしかありませんよね。例えば、GPSで走行位置を把握し、その規制速度でリミッターが設定されるとか。BMWにあるLIMボタンを自動化するようなものですね。

日本車では、ブレーキとアクセルの踏み間違いを防ぐ機能を各メーカーが出しています。一方で輸入車は・・・あんまりありませんね。これは私は危惧しているところです。例えば今度ブレーキとアクセルの踏み間違いで事故が起こったとして、その時にそれが最新の輸入車なのにブレーキとアクセルの踏み間違いを防止するデバイスが装着されていなかったとなった場合に、そこだけ注目されて輸入車がバッシングされることになりかねないと思っています。

ちょっと話がずれてしまいましたが、このように、完全自動運転の実現が遠い将来になりそうなのであれば、まずはちょこちょこと事故原因を防ぐデバイスをつけていくしか無いのでは?ということです。

例えば、アウディではアクセルとブレーキを同時に踏んだらブレーキ操作がアクセル操作をオーバーライトするようになっています。スポーツドライバーには悪評ふんぷんだと聞いたことがありますが、これは一つ有効でしょうね。ブレーキのつもりがアクセルを思いっきり踏んでいたりするのが今までだとしたら、これからは止まらなかったら両方のペダルを思いっきり踏めば止まるようにする、とか。

そういう点では、BMWのアクセルペダルはオルガンタイプ、ブレーキペダルは吊り下げ式となっているので、あくまでドライバー主体ですが踏み間違え難くしているのは、有効ですよね。

もちろん、交通環境やドライバーの意識も大事です。が、クルマにできること、クルマが求められる役割というものも、これからの社会構造の変化に伴って変化していっていて、メーカーとしてもそれに対処していく義務があるのではないでしょうか?

クルマは正しく乗れば便利です。そして、クルマは楽しいです。クルマを生産するメーカーはもちろんのことですが、ドライバーにとってもクルマを運転するということは社会的に極めて大きな責任を負っています。

メーカーと行政の努力により、一刻も早くこうした悲惨なニュースがなくなることを願っています。

ちょっとまとまりがなくなってしまいましたが、今回はこの辺で失礼します。これから迎える師走の時期、くれぐれもご注意して運転してくださいね。

ありがとうございました。

 

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6 件のコメント

  • こんばんは。
    いつもPontaさんの着眼点というか話題振りには感心させられます。コメントせざるを得ないというか自分が考えている事と時を同じくしているというか…。
    高齢化はこれから世界中で加速度的に起こってくる現象で、日本は先駆的な位置に居ます。世界規格を睨みながら機能を提案していく立場であるべきでしょうね。
    ただ現状の踏み間違いを防ぐ機能が正しい姿なのかはちょっと疑問です。警報機能くらいでいいかも知れません。あくまでアシスト機能であるべきかと。
    当面の対策としてまずは対人監視機能付自動ブレーキが一番装着を急ぐべきデバイスかなと思います。少なくとも歩行者や衝突へのダメージは今より低減できるのではと。
    私の父も運転好きですが、そろそろ返す返さないを考える年齢になっています。うっかりミスも若い頃より増えて来ていると思いますし、次の帰省の時には自動ブレーキ付きにする様に話すつもりです。
    エコカー減税で需要を伸ばす施策が取られていますが、燃費による減税よりも高齢者向けの安全装備補助費は急務かと思います。
    その他周辺監視機能の類。BMWで言えばレーン・デパーチャー・ウォーニングとかレーン・チェンジ・ウォーニングとかですね。
    衰えてきた能力を補助する機能は廉価版ではなくフル機能版で補助金で普及を促進するのがいいと思います。
    義務化の話もありますが、義務化は機能をある意味縛りますから、発展途中の技術の発達を阻害する事にならないか心配です。

    • (元)E46乗り様

      いつもコメントいただきありがとうございます!

      これは難しい問題ですよね。高齢化社会に関して各国と各メーカーがコンセンサスを形成して同じ方向に進めばいいのかもしれませんが、自分のポジションを優位にしようとする思惑が働くのでしょう、中々一意団結して進むという感じではありませんよね。

      歩行者検知機能にしろ、周辺監視機能にしろ、まずは制度を高めてコストダウンの上標準装備化というのが一番急がれる対応ですよね。

      そして私も(元)E46乗り様と同じく、環境対応よりも急がれる対策なのではないかと感じております。もちろん、環境対策も重要なんですけど。

      もちろん、各自動車メーカーとも頑張ってくださっていることとは思いますが、とにかく「早く!」との思いが募ってしまい、記事にしました。

      では、またのコメントお待ちしております。

  • pontaさんいつもいい記事ありがとうございます。
     この件については、今何か指示があるかのように、各局がニュース等で取り上げていて、毎度のことながら政治的な思惑さえ感じています。各局の報道の方向性は多少の温度差はあるようですが、高齢者の免許について見直せという論調が主流かなと。唯一テレ朝が、自動運転の方向感を打ち出していたような。
     小生も、pontaさん同様に、現在の地方の過疎化を踏まえれば、車のない生活は考えにくく、なかなか免許制度でこれを片付けることは難しいだろうと思います。
     となれば、自動運転・・・となるわけですが、Mercedesの営業担当が言っていたことには、「ステアリングアシストは、手放しでも問題ないのだが、国交省が認可してくれないので、手放しするとワーニングが出るようになっている」と。すでに新型Eクラスは、道路標識を認識し、速度制限を認識して画面に出ていますが、この辺の速度コントロールも制限しているようです。

     国交省がなかなか腰が重いのも、ひとつには国内メーカーの取り組みの姿勢もあるのかも知れませんが、やはり事故のときの責任の所在に関する整理などの課題もあるようですね。
     いささかトピずれですが、かなり前に北海道の奥尻島で地震があり、その後の火災に対し、保険金が支払われないということで、住民が集団訴訟を起こしたことがありました。このことについて、海外では驚きをもってニュースになった由。曰く「約款で、地震を原因とする火災は免責となっていて、その約款をもらっているのに、なぜこれが訴訟になるのか」と。契約や責任に対する彼我の違いを象徴するような話ですが、自動運転で、今後この手の話が出てきたときに、ややこしいことになるのを国交省も懸念しているのかもと。

     長くなりますが、個人的には自動運転技術の進展とともに、バイクに毛の生えたような三輪車みたいなシティコミューターの普及も、今後必要かと思っています。大昔の日本にあったような三輪車や、タイのトゥクトゥクみたいなものや、7-11の配達に使っている三輪バイクなどがヒントになるかと。

    • 桂様

      いつもコメントいただきありがとうございます。

      桂様、ナイスアイデアです!三輪車やトゥクトゥクのようなイメージなら安価に普及できますね。もちろん、スピードは抑えて、ですが。そしてある程度のところまではそれで行って、駐車場(駐輪場)などが整備されている公共交通機関の停留所なり駅なりで乗り換えるということができれば行動範囲が狭まりませんよね。

      一方で自動運転にも明るいニュースが出てきましたね。秋田の田沢湖畔で完全自動運転のバスが走っています。専用軌道を走るようになっていますが、実は私がイメージしている高齢者用の完全運転車はこうした従来の自動車とは完全に分離されたところを走る、あたかも線路の上を走るかのように、というのが理想かと思っているんですが、費用が嵩むかな・・・というのが心配なんですよね。

      自分にとっても結構近い将来の話になってきてしまっていますので、身につまされる話です。

      では、またのコメントお待ちしております。

  • 今の80歳以上のドライバーの方は、1960年代のモータリゼーションとともに免許を取られた方が多いと思います。私の親父がまさにそうで、オートバイからオート三輪、軽自動車、そして普通乗用車へと矢継ぎ早にステップアップしました。80歳を超えた時に軽い接触事故を起こしまして、それを機会に免許を返納しました。私ども家族がいるので特に不便はなかったはずですが、それから引きこもり状態になってしまい、1年ほどでこの世を去りました。
    免許を自主返納するにせよ、取り上げるにせよ、高齢者が自分で運転をしなくなってから急速に弱り、死に至るという話は、このあたりではよく聞きます。自信や気力がなくなってしまうのが原因だと思います。
    当地は名古屋市近郊で、病院、銀行、市役所、スーパー、ショッピングモール、映画館、カラオケ・・・なんでもあります。ただし、どこへ行くにもクルマが必要です。かろうじてコンビニが1㎞先にありますが、当然のようにクルマで行ってしまいます。高齢者がクルマの走り交う往復2㎞の道のりを歩くのは結構大変ですし危険です。
    市街地といえども、夜間はもちろん、日中でも道を歩いている人はほとんど見かけません。車、くるま、クルマです。スピードが速いので、道ばたで誰かが転んでいても、しばらく誰も気がつかないかも知れません。
    モータリゼーションという奴は、過疎地ばかりでなく、むしろ当地のような半田舎の地方都市の有り様をすっかり変えてしまいました。バスも1時間に4~5本は出ていたのが、今や日中は1時間1本です。行政も真剣に取り組み初めてはいるものの、限界があります。クルマに頼りきり、慣れきってしまった者をクルマ依存症と呼び、高齢になったからとっとと免許を返納せよ、という論調は素直には受け入れられません(もちろんPonta様のことではありません)。
    何を書いているのか分からなくなってしまいましたが(苦笑)、地域の実態に寄り添った対策を取っていかないと、近い将来にはエラいことになりそうです。
    私自身は、「そのとき」を自覚したら潔く返納するつもりでいましたが、いや待てよと。BMWの他にMTの軽トラがあるので、こいつを町内専用にトロトロ走らせてもらおうかなと思い至っています。そして運転しなくなっても引きこもらないで、老後を楽しく過ごせる方策を考えなければ。

    • 夢酒様

      いつもコメントいただきありがとうございます!

      お父上のお話を伺い、非常に悲しい気持ちになりました。これを「高齢者は免許を返納しろ!」と叫んでいる方に読んでいただきたいです。それだけ、足をもがれると言うのがいかに精神面でも影響を与えるのか、と言う話ですよね。

      モータリゼーションの発達とともに公共交通機関は衰退していきました。地方の不採算路線の廃止や、第三セクターの営業不振等、例を探せばキリがありませんよね。

      夢酒様のおっしゃる「地方都市」の状況というのは、私もよく理解しているつもりです。私の親戚が多く住むところも似ていまして、中核都市であるにも関わらず、公共交通が発達しているのは中心部のごく一部だけ。一家に1台ではなく、18歳以上ひとりに1台という感じで車を所有するのが当たり前です。飲みに行くのもクルマで来るのが前提の場所のような場所にお店があり、従って運転代行が大繁盛。東京ではほとんど見かけませんけどね。これは酒気帯び・酒酔い運転が後を絶たないわけだ、と思います。

      高齢化社会・酒気帯び運転撲滅・事故防止といった観点からも、安価な自動運転による、自由度の高い公共交通システムの構築を急ぐべきですよね。専用軌道を走る田沢湖畔の自動運転バスも然り、東京オリンピックで予定されている自動運転バスも然り。そこから発展させて、さらに気軽に使えるようなシステムを構築して欲しいものです。果たして、今の政治家の中でそこまで大きな絵がかける方がいらっしゃるかどうか・・・それでも私は期待したいと思います。

      では、またのコメント楽しみにしております。

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