40代子持ちのクルマ好きが、愛車のBMW 320dツーリングを評価するとともに、ちょっとだけ日々を楽しくするクルマのある生活の話題をお届けします。

高齢者の重大事故の報道を見て思ったこと。

ここ数日、高齢者による重大事故の報道が続いています。このニュースを見ていると必ず出てくるのが、免許返納制度のことですが、私はちょっと実効性に疑問を持っています。

免許返納はいいけど、その後は?

このタイトルが私の疑問そのままです。

公共交通機関の発達した都市部に住んでいるならまだしも、そうでない地域に住んでいる高齢者の方にとってはクルマは生活必需品とも言えるものです。

こういう方にとっては、免許を返納するまではクルマを運転してどこにでもいけたのに、免許を返納したらそれができなくなるという、生活スタイルの一大変化を余儀なくされます。

足腰も弱くなってきている中で、今まで行けたところに行けなくなるという変化を伴う免許の返納が大多数の人には受け入れられないというのは、当然といえば当然かもしれません。

実際、私の周りでも今までピンピンしてどこでもクルマで行っていた人が、ある日突然免許を返納したというのを聞いたことはなく、重大では無いにしても、どこかにぶつけるなどの事故を起こしてから返納を考えるというケースが多いようです。

そして大抵の方はこのように考えられていらっしゃいます。

「もう歳だからクルマを運転するのは危ないのはわかっているからなるべく運転しない。だけど何かの時のために免許は返納せずに持っていたい。」

実は問題の一面というのはここにあるのでは無いでしょうか?要するに、普段運転していない方が、いざという時に運転するようになって、昔どおりに運転しようとして事故を起こす、とが1点。

そしてもう1点が「いざ」という時のために、自分で運転していく以外の代替交通手段が無い、ということです。

自治体が色々と策を講じてはいますが。

自治体によっては、免許返納後にもらえる証明書を提示することで、公営バスの運賃の値引きや無料化を行っているところもあるようです。

ですがこれは先ほど述べた公共交通機関が発達している地域であればこそ有効なのであって、それ以外では使えませんよね。

タクシーなんかも証明書の提示で半額とかにすればいいんですけどね。もちろん、タクシー会社の経営も厳しい中、こうしたサービスを行っているタクシー会社には国や自治体から補助金を出すことが必要ではありますが。

ということはその財源が必要になりますよね。そうすると、高齢化社会で労働人口が少なくなっていく中ではこれも絵に描いた餅にすぎません。

完全自動運転なら解決できる!のですが・・・

個人的な意見を言わせていただくと、いわゆるレベル5の完全自動運転が実現されればこの問題は解決できることだと思います。

つまり、免許証は依然として持ち続けるのですが、完全自動運転車を高齢者がそ有することによって、重大事故を防げるようになる、と。

ですが、この完全自動運転は、技術的な問題以外でも容易には実現できそうでは無いんですね。

ちょっとここで一度、自動運転のカテゴリーを見て見ましょう。これは、米国SAEの5段階を、BMW流に要約したものということです。

レベル1=フットフリー

自動ブレーキやクルーズコントロール。アクセルとブレーキの操作からドライバーが解放される。

レベル2=ハンズフリー

車線維持が可能となるので、ドライバーはステアリングから手を離すことが可能。

レベル3=アイズフリー

部分的にシステムが完全制御運転をするので、ドライバーは運転視界から目を離すことが可能。

レベル4=ブレインフリー

人が関与しなくてもクルマ側で運転操作をするので、ドライバーは目も頭もサブタスクに専念することが可能。

レベル5=ドライバーレス

(出典:CAR GRAPHIC12月号)

私の愛読誌CGからの出典ですが、別のページにはまた、米国NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)の定義するレベルが掲示されています。

自動運転レベル 概要 注(責任関係等) 左記を実現するシステム
レベル 0 ドライバーが常に加速・操舵・制動の全ての操作を行う。 ドライバー責任
レベル 1 加速・操舵・制動のいずれかをシステムが行う状態 安全運転支援システム
レベル 2 加速・操舵・制動の複数をシステムが行う状態 ドライバー責任

※監視義務およびいつでも安全運転できる態勢

準自動走行システム 自動走行システム
レベル 3 加速・操舵・制動を全てシステムが行い、システムが要請したときはドライバーが対応する状態 システム責任

※特定の交通環境下での自動走行(自動走行モード)

※監視義務なし(自動走行モード:システム要請前)

レベル 4 加速・操舵・制動をドライバー以外が行い、システムが要請したときはドライバーが全く関与しない状態 システム責任

※全ての行程での自動走行

完全自動走行システム

(出典:CAR GRAPHIC12月号)

いかがでしょう?

高齢者の事故には色々と原因があるかとは思います。体が固いが故に、バックの時に体をひねると足の位置がずれてしまう、など考えられますが、恐らく一番問題になるのは、「認知・判断」の部分ですよね。

となると、いずれの基準でも完全自動運転でなければ高齢者向けにはならないわけです。

ところが。

ここに自動車の国際規格というか、世界中でこうあるべきと定めているジュネーブ条約というものがあるらしいのです。私たちが国際免許を取得して海外でも運転できるのは、日本がジュネーブ条約加盟国であるからなのですが、そこで、

「つねにドライバーが操縦を行い、安全のために注意を払わなければならない」

という規定があるそうなんです。

これとNHTSAの表を見比べると、気づくことがあります。そもそも、表の中で、完全自動運転中はシステム責任となり、ドライバーに責任が発生しない=メーカー側の責任を問われることに驚いた方もいらっしゃるでしょうが、私はジュネーブ条約の規定を逆に解釈すると、「完全自動運転者にはドライバーがいない」ことになるのでは無いのかと思っています。

つまり、全責任はシステム開発サイドにあるということです。

自動車メーカー及び関連部品メーカーが受け入れるでしょうか?

タカタのエアバッグ問題を見ても分かる通り、万が一システムに瑕疵があることが原因で事故が起こったとすると、全責任がメーカーに被せられ、同様の事例が多発したとすると巨額な損害賠償が発生します。

そうすると、完全自動運転システムをいち早く開発したメーカーが先行者メリットを享受するどころか、むしろ会社の存亡の危機に立たされる可能性の方が大きいんですよね。

これは理論や技術ができても、中々完全自動運転までの道のりが遠そうです。

ですがこれから高齢化社会を迎える日本、そんなのんびりともしていられないのでは?

今現在市販されている車で、両方の表でレベル2以上のクルマはありません。

完全自動運転が遠いのであるならば、まずは手っ取り早く運転システムを安全に近づけるしかありませんよね。例えば、GPSで走行位置を把握し、その規制速度でリミッターが設定されるとか。BMWにあるLIMボタンを自動化するようなものですね。

日本車では、ブレーキとアクセルの踏み間違いを防ぐ機能を各メーカーが出しています。一方で輸入車は・・・あんまりありませんね。これは私は危惧しているところです。例えば今度ブレーキとアクセルの踏み間違いで事故が起こったとして、その時にそれが最新の輸入車なのにブレーキとアクセルの踏み間違いを防止するデバイスが装着されていなかったとなった場合に、そこだけ注目されて輸入車がバッシングされることになりかねないと思っています。

ちょっと話がずれてしまいましたが、このように、完全自動運転の実現が遠い将来になりそうなのであれば、まずはちょこちょこと事故原因を防ぐデバイスをつけていくしか無いのでは?ということです。

例えば、アウディではアクセルとブレーキを同時に踏んだらブレーキ操作がアクセル操作をオーバーライトするようになっています。スポーツドライバーには悪評ふんぷんだと聞いたことがありますが、これは一つ有効でしょうね。ブレーキのつもりがアクセルを思いっきり踏んでいたりするのが今までだとしたら、これからは止まらなかったら両方のペダルを思いっきり踏めば止まるようにする、とか。

そういう点では、BMWのアクセルペダルはオルガンタイプ、ブレーキペダルは吊り下げ式となっているので、あくまでドライバー主体ですが踏み間違え難くしているのは、有効ですよね。

もちろん、交通環境やドライバーの意識も大事です。が、クルマにできること、クルマが求められる役割というものも、これからの社会構造の変化に伴って変化していっていて、メーカーとしてもそれに対処していく義務があるのではないでしょうか?

クルマは正しく乗れば便利です。そして、クルマは楽しいです。クルマを生産するメーカーはもちろんのことですが、ドライバーにとってもクルマを運転するということは社会的に極めて大きな責任を負っています。

メーカーと行政の努力により、一刻も早くこうした悲惨なニュースがなくなることを願っています。

ちょっとまとまりがなくなってしまいましたが、今回はこの辺で失礼します。これから迎える師走の時期、くれぐれもご注意して運転してくださいね。

ありがとうございました。