40代子持ちのクルマ好きが、愛車のBMW 320dツーリングを評価するとともに、ちょっとだけ日々を楽しくするクルマのある生活の話題をお届けします。

BMWのATにあるCOMFORTモードの存在意義

BMW

現在新車で購入出来るBMWには全てATのモード切り替え機能、「ドライビング・パフォーマンス・コントロール」が付いています。大抵の方はECO PROモードにすぐ切り替えて走り出すのではないでしょうか?燃費もいいですしね。そして山道などに来た時にSPORTモードに切り替えて・・・とすると、COMFORTモードって何のためにあるのか、わかりませんよね?ですが以外と使えるんですよ。

COMFORTモードは使わない?

以前、「モードを何にすればいいのかわからない!」ということを題材に記事を書きました。

BMWの「ドライビング・パフォーマンス・コントロール」〜みんな戸惑うモードの選択

ここではATの左側に倒した時のSPORTモードと、ドライビング・パフォーマンス・コントロールのSPORTモードにスポットを当てていました。

では、COMFORTっていつ使うの?という疑問、湧きますよね?ECO PROモードがある今、普通に流しているときにはECO PROを使っていた方がいいですからね。

ですがちょっとまってください。なぜモードの名前が「COMFORT」なのか?と思いませんか?本当に「COMFORT(快適)」なの?と思いませんか?

ECO PROとCOMFORTの違い

教習所で学んだかと思いますが、トルクコンバーター式のATって、扇風機と扇風機が向かい合っていて、その羽の間を満たしているオイルを一方の羽がかき混ぜてもう一方の羽を回す仕組みになっていますよね?そして、トルコンにはこのオイルが介在してスリップしているが故にトルク増大作用があると。

ですがこの仕組み故にエンジンのパワーがロスなく伝わらなくて、ATとMTがあるクルマでは伝達ロスのないMTの方が燃費がいいということも教わったのではないでしょうか。

最近のATは非常に効率良くなってきています。今ではATの方がMTよりも燃費・加速データともいいクルマも珍しくありません。

こういう観点で、ATをさらに効率良くするために生まれてきたのが、いわゆる「セミAT」です。先鞭をつけたのはフェラーリですが、その後VWがツインクラッチ式のものを開発して変速時間を短縮してより効率をあげました。今ではBMWでもMシリーズには搭載されていますね。

ですがこのツインクラッチ式のセミAT、制御が難しいのか部品点数が多くてコストがかかるのか知りませんが、完全にトルコン式のATを駆逐するには至っていません。

その代わりと言っては何ですが、トルコン式ATでも羽と羽を直結させて伝達ロスをなくす「ロックアップ」という仕組みを取り入れて、効率と燃費の向上を果たしています。

特に最近のダウンサイジング・ターボ車は低速トルクが従来のNAエンジン(自然吸気エンジン、すなわちノンターボ)に比べて圧倒的に太いので、かなり低回転域からロックアップすることができるようになっています。

そろそろお気づきでしょうか?そうです。ECO PROモードはこのロックアップ領域をかなり低回転域まで広げて効率を良くしているんですね。昔は高速での定速走行時のみ、しかも一番上のギアに入っている時のみしかロックアップしなかったことを考えると、トルコンスリップを生かしたトルク増大作用を捨てて効率を選んでいるわけです。

これに対してCOMFORTではトルコンがスリップしています。ACC(アクティブ・クルーズ・コントロール)をセットして、前車が動いた時の加速の仕方を見てみてください。ECO PROモードでは、あくまで320dの場合ですが、ACCを設定して加速を任せると、2千回転くらいで回転上昇を止めてここでだんだん直結に持って行って、直結してからスピードを上げるのがわかります。

これに対してCOMFORTモードの時はもっと素直です。すっと回転を上げて加速していきますよね。

そう、トルコンスリップをある程度許容して、定速走行に入ってからロックアップしているんですね。

ロックアップする・しないで快適性は変わる?

私は変わっていると感じています。

ECO PROモードですと、本当に低回転域から直結しようとしてくるので、高速道路の本線料金所からの加速時など、時に加速がじれったいんですよね。それに比べてCOMFORTモードですと意のままに加速しますので、ストップ・アンド・ゴーの多い街中では扱いやすいです。しかも、いつもECO PROモードで走っていると、COMFORTモードにした時に「おお!こんなにパワーがあったんだ!」と驚きます(笑)。まあ、これはアクセルの非線形の設定によるところも多いと思いますけどね。

また、これはディーゼルだからこそ感じるのかもしれませんが、COMFORTモードの時の方が、なんといいますか、エンジンがスムーズなような気がします。時々ツボに入ると本当に無音・無振動になるんですよ。アイドリングストップとそこからの復帰の振動も無くなりますし。あくまでツボに入った時ですよ?どういう時かというと・・・今の所は私は規則性を見いだせていませんので、不定期としか言いようがありませんが、現在神経をとがらせて観察中です。

もちろん、どういう時が「ツボ」に入るのか、わかりましたらすぐに当ブログでご報告します。実は一度こうじゃないかな?と思ったのですが、いつもではなかったので、恐らく複合的な要因だろうと思ってアタリをつけていこうと思っています。

注意点

COMFORTモードにしていると、特に変速自体は低速ギアで引っ張ったりはしないのでどんどんシフトアップしていきます。その結果・・・あっという間にスピードが出すぎるんです。

信号待ちからちょっと加速してバックミラーを見て「あれ?なんで後ろはついてこないんだろう?」と訝って自分のスピードメーターを見ると、あっという間に60km/hなどに達していてびっくりします。加速感はあくまでジェントルなので、そんなに集団から飛び出すほどの加速とは思わないんですよね。

これは恐らくドイツ基準なんでしょうね。ちなみにあんなに信号待ちからの発進でトロトロ加速するのは、私の経験から言うと日本だけです。ドイツではみなさん青になる前からじわじわと前に出て、青になったら結構な加速をしていきます。ここで日本的に加速していると後ろからクラクションを鳴らされること請け合いです。というか、私は新婚旅行で行った時には市街地で何回か鳴らされてしましました。私もそんなにトロトロ発進する方ではないんですが・・・。

日本での話に戻すと、ここで気づかないうちにスピードが出すぎるのを防ぐのは簡単です。今やACCが標準となっているF30系でもなぜか生き残っている「LIM」ボタンを使うんですよ。

「LIM」ボタンをして最高速度を設定しておけば、キックボタンスイッチを超えてアクセルを踏まない限り、設定スピードになったらリミッターカットのように加速が止まります。つまり、「LIM」ボタンを押して流れに沿った速度に設定しておけば、信号待ちから勢いよく加速しても設定速度以上は出ないわけです。

市街地では「COMFORT+LIM」、試してみてください。結構病みつきになりますよ。楽で楽で。

でも燃費がお悪いんでしょう?

はい。ECO PROモードよりも明らかに悪くなります。ずっとCOMFORTで走っているわけではないので正確には言えませんが、感覚的には1割くらいの悪化という感じです。

また、COMFORTモードにしていると、ECO PROモードの奥の手「セーリング」を使えないので、定速走行が続くときはすかさずECO PROにした方がいいと思います。セーリングとは、アクセルを離すと駆動系を切り離して空走することで燃費を良くする機能のことです。設定しないと機能しないのですが、設定方法はこちらからどうぞ。

BMWのECO PROモードは本当にエコか?

まとめ

ECO PROモードは低回転から太いトルクを発生する、ディーゼルは言わずもがな、ダウンサイジングターボエンジン全般に共通する特性をうまく使って省燃費を実現するモードで大変よくできています。ですがCOMFORTモードはその名のごとく最も快適に走れる設定で、伝統的なBMW的制御となっていることは、しばらく市街地を走ってみれば実感できると思います。実際、COMFORTモードで走っているとE90の時と同じような感覚で運転できます。

使用する場面、その日の気分など、なんでもいいです。たまにCOMFORTモードで走ってみると、いつもECO PROでは気づかなかった愛車の魅力に気付けるかもしれませんよ?

では、今回はこの辺で失礼します。ありがとうございました。