前回記事で「道路に埋め込んだワイヤレス充電でEVを充電させる」というEVにとってバラ色の未来をご紹介したのですが、いきなり暗雲が立ち込めて来ました。永遠のライバル、BMWとメルセデスの提携交渉がカルテル暴露により中断との発表です。
ドイツ車連合崩壊の危機
この記事をお読みください。
BMW、ダイムラーとの提携交渉を中断=独紙
7/26(水) 11:43配信
7月25日、ドイツ自動車大手BMWは、同業ダイムラーが業界のカルテル疑惑についてカルテル庁に情報を提供したことを受け、同社との提携交渉を中断した。南ドイツ新聞が、関係者の発言を引用して伝えた。5月、ウィーンで撮影(2017年 ロイター/Heinz-Peter Bader)
[ベルリン 25日 ロイター] – ドイツ自動車大手BMW<BMWG.DE> は、同業ダイムラー<DAIGn.DE>が業界のカルテル疑惑についてカルテル庁に情報を提供したことを受け、同社との提携交渉を中断した。南ドイツ新聞が25日、関係者の発言を引用して伝えた。
BMWの経営陣は、部品の共同調達や電気自動車向け充電ステーションの開発におけるダイムラーとの提携について、慎重に見直す。
充電ステーションの開発プロジェクトには、フォルクスワーゲン(VW)<VOWG_p.DE>や、米フォード<F.N>の欧州部門も加わっており、遅れる可能性はあるものの、今後も継続される見通し。
ダイムラーの情報提供は、自社とVW、BMW、アウディ<NSUG.DE>、ポルシェが価格や技術について談合した疑いに関するものだった。関係者によると、これによりBMWのダイムラーに対する信頼は「全面的に損なわれた」という。
最終更新:7/26(水) 11:43
え?!いきなりですか?!こんな大連合もあるのに・・・。
i3の航続距離延長、X3やMINIをベースとしたEVの開発、そして次期3シリーズにもEVの噂・・・日本ではEVは日産リーフしかまだ実現していませんが、ヨーロッパでは本気出しています。その本気度合いがうかがえるニュースを発見しましたのでご紹介[…]
最近、BMWとメルセデスのミシュランprimacy3を共に認定タイヤとして指定するなど、部品共通化の動きが進んでいました。Primacy3は私が絶賛お勧めするタイヤなのですが、そのあとでこうした動きが出てきて、手前味噌ながら自分の目に狂いがなかったのかも、と一人自己満足に浸っていたものです。
ですが、これは完全に水を刺されましたね。
高騰する開発費
これから自動車は内燃機関から、長い時間をかけてEVへの転換期に入っていくことは間違い無いでしょう。
これは、今までガソリンや軽油による内燃機関から、エンジンだけではなく全てのインフラももう一度全面的に再構築する必要があることを示しています。インフラの整備まで自動車メーカーがやるの?と思われるかもしれませんが、欧州の自動車メーカーが課せられる予定の排ガス規制を考えると、PHEVやEVの販売比率を上げなければ達成不可能なのはよく知られており、となるとそのEVやPHEVを売るためにはインフラが必要になり・・・と芋蔓式に連なってきて、「自社の製品を売るためにインフラを整備しないといけない」ということになるわけです。
これは一自動車メーカーには負担が大きすぎますよね、幾ら何でも。政府が補助金を出すにしても、社内の開発費までは負担してくれませんから、それこそBMWとトヨタのような大メーカー同士の提携が必要になるというのはなんども当ブログでお話しした通りです。
昨今のドイツメーカーはコストダウンに非常にご執心です。一例をあげると、BMW3シリーズだって、E90ではガラスはPilkintonという、イギリスメーカーのもの(今は買収されて日本の旭硝子の子会社のなっている、欧州屈指のガラスメーカー)のものでしたが、F30では・・・どこのかわかりません(笑)。一説によると中華製という話も。
BMWは元々簡素な室内のクルマでしたので、コストダウンすると余計にみすぼらしくなりそうですが、これはかろうじてデザインで防いでいるといった感じですよね。まあ、コストダウンしてあの価格で売るの?!と言いたくもなりますが、コストダウンにご執心なのは確かです。
ある意味、自動車メーカーが共同戦線を張っていたのかも。
現代の自動車って、部品の供給元はある程度共通化されてきています。ATなんかはわかりやすいですよね。
自動車エンジンに革命を起こした、コモンレール式燃料噴射システムだって、ボッシュから技術的な提案があり、各自動車メーカーが採用した、というものです。
今やもう、かつてのように自動車メーカーが全ての技術開発をして下請けに仕様を示して発注する、という体制では無いんですよね。つまり、自動車メーカーというのは、あくまで開発の主導権を握りたいですし、未だに握っているものの、サプライヤーに対してのその地位というのは揺らいでいるわけです。
これが完全自動運転車の開発が絡んでくると、この傾向はますます強くなります。つまり、AIの提供元や、カメラやセンサーとそのアルゴリズムをは開発するサプライヤーなしでは開発は考えられませんし、開発費もますます高騰するというわけです。
近い将来想定されるこのような事態に対して、自動車メーカー側が共同で既得権益を守るために防衛線を張っていたのがこの価格カルテルなのでは無いかと、個人的には勘ぐっています。
BMWにも言い分はあるのでしょうけど。
それにしてもすごい言い草ですよね。カルテル庁というお役所があるくらいですから、そうした商業上の不正行為を相当に厳しく取り締まっているのでしょうけど、カルテルは不正な価格操作という、市場原則に基づいた自由主義経済の根幹を破壊するものですし、どこの国でも違法です。
それを漏らされたからって、「信頼が完全に損なわれた」って(笑)。まあ、BMWにも言い分はあるのでしょうね。あくまでも、サプライヤーに対する価格低減高尚である、ということなのでしょう。何社かが共同でこのくらい買うからこのくらいの値段に抑えてください、的な。
それにしてもメルセデスもあざといです。さすがは政治力のある大メーカー、これによって何らかの司法取引があったのでは無いかと私は睨んでいますが、これとて今後の熾烈な開発競争を戦い抜くために政府を味方につけようという戦略なのでしょう。
これを概観すると、要するに政府が帰省している排ガス規制や、市場の要求によるEV社会への転換というのはラディカルすぎて、現代の自動車メーカーでは手に負えないところまで来てしまっている、ということです。きっと、この大転換の過程で、出遅れたり、開発に耐えられずに他メーカーの参加に降ったりするメーカーが出てくるでしょう。そうすると、市場としては選択肢が少なくなり、かつ価格も転嫁されるので決して望むような、「今までと同等の価格での完全自動運転EV」なんかを望むことはできなくなるわけです。これって、却って我々ユーザーにとっては損をすることになると思うのですが・・・。
逆に言えば、欧州勢がこのような内輪もめをしている間に日本のメーカーも付け入る隙があります。特に現在BMWと技術提携をしているトヨタはもう一歩踏み込んだ提携を勝ち取るチャンスでは無いでしょうか?トヨタが今後もグローバルで競争力を持ち続けるためにはいい選択だと思うのですが・・・何はともあれ、「完全自動運転」と「EV」という次世代社を巡るキーワードを軸に考えると、こうしたメーカー間の提携に関する動向からは目が離せませんね。
明らかに、今までとは違う意味が含まれていますから。
では、今回はこの辺で失礼します。ありがとうございました。
P.S.当ブログコメント欄にコメントいただいている読者様へ
コメントをいただきまして本当にありがとうございます。
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