ALPINAディーゼル試乗会、前回記事のXD3に引き続き今度は本命のD3試乗です。もう、こんなクルマが世の中に存在することが驚きというくらい、究極の完成度を誇る、スーパーサルーンでした。
憧れのD3!
以前B3に乗った時もかなりの感動を覚えましたが、やはり現在320dに乗っている身としてはD3が圧倒的に気になります。気になるどころか、当ブログでも再三申し上げておりました通り、私の究極の憧れでもあります。
さて、実はもうアルピナ世田谷ショールームさんに到着した時から、試乗するD3は目に入っていました。Xd3試乗を終えて帰ってきたら、セールスさんが早速D3を用意してくださいました。
アルピナ・ブルーではありませんが、ミネラル・ホワイトにゴールドのストライプ、非常に上品な外観の1台ですね。ここで思うのは、なぜだかアルピナのデザインにはどんなボディカラーを纏ってもカッコよく見えるんです(笑)。これは私の憧れからくるバイアスもかかっていると思うのですが、全般的にBMWディーラーにある試乗車よりも豪華仕様であることと、大径ホイールを履いていることからボディとのデザイン上のバランスがいいから、というのもあるのではないでしょうか?
しばらくうっとりと眺めていたい、いや、このまま持って帰りたいくらいなのですが、試乗しなければ何にもなりませんよね。ですので、早速乗り込むことにしました。
おっと、その前に恒例のタイヤチェック。銘柄はミシュランPS2、サイズは標準の19インチで、前245/35R19、後265/35R19でした。B3と違って、20インチはオプションですが、19インチの方が乗り心地には期待が持てますし、見た目のバランスもいいと思います。20インチとなると、視覚的にタイヤが薄すぎて不安になってしまうんですよね。
試乗車の内装
内装はおしゃれなサドルブラウンでした。ボディカラーと相まって、ものすごく上品なのですが、色気すら感じられる、いい組み合わせです。ちなみに、ルーフの方の内装色はこの写真ではグレーに見えますが、淡いブラウンですので、内装の統一感はきちんと取れています。
外で聞いても静かなディーゼルエンジン。もちろん、静かなだけではありません。
実はこの時点で外から聞こえるエンジン音が、ディーゼルらしからぬ(笑)音をしていることに気づいていました。なんだか、カラカラしている音ではないんです。うまい擬音が思いつかないのですが、セールスさんにXD3試乗の時に言われた、B3よりも静かだというのは嘘ではない予感がこの時点でしていました。
乗り込んでドアを閉めると、私の320dでもそうですが、エンジン音は聞こえなくなります。そしてそろそろとアクセルを踏んで、先ほどと同じルートをたどるべくショールームから出た途端。
鋭い加速!
XD3と同じエンジンであるにも関わらず、如実に軽さを感じさせました。かなり軽快な加速です。しかも、アクセルをちょっと踏んだだけで飛ぶように加速します。でも、決して暴力的な感じではなく、あくまでジェントルな感触を損なわないのはさすがですね。
排気音の演出がこれまた絶妙。ロードノイズはXD3よりも大きいけれど。
そして、室内で運転して初めて気づいたのですが、このD3にも装着されているAkrapovic(アクラポヴィッチ)のマフラーがいい音を奏でること。正直、ディーゼルでスポーツマフラーを装着しても、音の面で効果があるのかどうかには懐疑的でした。ですが、中で聞いている限り、快適性を損なわない程度に、重低音を基調としたいい排気音を聞かせてくれます。もちろん、回転をあげれば段々高周波な音に変化し、加速時はかなり気分が盛り上がります。
ですが、反対にロードノイズの侵入はXD3より大きいです。やはり、XD3の試乗の時にセールスさんがおっしゃった、SUVならではのストロークの長さが音を減衰しているのは間違い無いでしょう。ですが、そのストロークがない分、ステアリングに伝わる感触はよりソリッドで、むしろ私は好ましく感じました。
B3より快適
乗り心地は、ものすごくいいです。陳腐な言葉でしか表現できなくて申し訳ないのですが、B3よりも明らかにあたりが柔らかく、それでいてサスペンションのファームな感触は失われておらず、全ての3シリーズ中でも白眉の存在と言えるでしょう。高速巡航中はあくまでフラットな姿勢を保ち、路面の荒れはタイヤ自体のダンピングの良さと、サスペンションの柔らかめの初期ストロークで吸収していきます。
この時に思ったのですが、高速安定性やコーナリング性能を求めると、闇雲にサスペンションを固める傾向がありますよね。Mも少しそうした傾向があるのですが、それでも初期ストロークというのは確保しています。サーキットスペシャルであればそれもいいのでしょうけど、公道を走行することを考えると、ALPINAくらい初期ストロークの柔らかさを確保していた方が、路面の荒れにも車両の姿勢が乱れずに却って安定するのではないでしょうか?
そんなことを考えながら第三京浜を流していきますが、セールスさんのおっしゃっていたことが本当であることを確認しました。そう、「B3よりも静か」という、あのセリフです。
もっと正確にいうと、「快適性はB3よりも上」ということです。これはクルマの性格からして、あえてそういう風にしているのだと思います。
どういうことかというと、B3って、最高巡航速度は300km/hオーバーのクルマです。日本ではとてもではないですがそんなスピードは出さないのですが、生まれ故郷のドイツでは実際にそういう使われ方をします。一方でD3の最高巡航速度は270km/h超。両方とも浮世離れしていて、もうどちらも変わらないだろうと思いがちですが、やはりそこはそれ、この速度域ともなると、求められる安定感というのは10km/h違うだけでも相当にレベルが上がるのだと思います。
そう考えると、D3にB3ほどの限界性能を付与する必要はありません。むしろそのぶんは日常域の快適性に振った方が、ユーザーにとっては嬉しいというものです。
そしてこれは見事に実を結んでいると考えられます。上の方で、オプションで20インチもあると申し上げましたが、この標準の19インチタイヤで十分、いや、こちらの方が好ましいでしょう。乗り心地の面でも、ロードノイズの面でも、です。
エンジン音も巡航しているときはえらく低回転ですので、確かにB3よりも静かです。
スポーツディーゼル3年連続No.1エンジンの実力(のほんの一端)
何もALPINAのディーゼルエンジンは、私が贔屓目で見ているわけではなくて全世界に認められているのですよ、とただそれが言いたいだけなのですが、正直申し上げると、私も、そうはいってもディーゼルなんだからガソリンエンジンの吹け上がりの気持ち良さには敵わないだろうと、心のどこかで思っていました。
ですが、第三京浜で巡航中にステアリング裏についているスイッチトロニックのボタンでシフトダウンして回転を上げ手から全開加速を試してみると・・・踏めません、怖くて。そのくらい吹け上がりが鋭く、怒涛の加速を見せます。
それではと、帰路に合流車線で前後に車がいないことを確認して一瞬の全開加速を試しましたが・・・これまたすごいです。感覚的にはB3に引けをとりません。0-100km/h加速のタイムは、ALPINAによるとD3が4.6秒、B3が4.3秒なので、それだけ見ると開きがあるように見えますが、実用的にも、感覚的にも違いはほとんど感じられません。
そして、驚くのはレッドゾーンである5,500rpmまで全く淀みなく周りきること。こういう表現って、ガソリンエンジンのスポーツカーで使われる表現だと思うのですが、ことD3に限っては掛け値なくこの言葉通りの吹け上がりです。この時もあっという間にレッドゾーンに達しました。そしてその時に聞こえるAkrapovicマフラーからの排気音も、主張しすぎないのに気分を盛り上げる、絶妙な具合の音を室内に伝えてきます。
いや、これは確かに世界最高峰のディーゼルエンジン、いや、ディーゼルかガソリンかに関わらず、スポーツエンジンとして相当にレベルが高いところにあると思います。
ALPINAが本当にやりたかったセッティングとは
帰路はXD3の時と同じく、Sportモードをためして見ました。ドライビング・パフォーマンス・コントロールのスイッチの前方側を一度押してモードを切り替えます。もう1度押すとSport+になりますが、このハイパワー車でDSCをオフにして走行する度胸はありません(笑)。
こちらもXD3の時と同じです。ステアリングがずしっと重くなり、やりすぎではない程度にサスペンションが「締まる」感じで、よりソリッドな感触を伝えてきます。ただ、線形の良い高速道路での巡航では必要ないくらいの安定感。第三京浜の早めの流れに乗っていても、こと安定性に関しては歩いている程度のスピードにしか感じません。
すると、お隣に同乗しているセールスさんがこんなことをおっしゃいました。
「確かにこのSportモードはtoo muchだと思います。ALPINAが本当に狙っているセッティングというのは、実はComfortモードなんですよ。Comfortのまま最高巡航速度で巡航できる性能を備えていますし、快適性もその方が高レベルです。このSportモードは純正のBMWで装着されているのでついていますが、あくまでオマケみたいなものですね。」
なるほど。こんなところにもALPINAのポリシーが見えて面白いですね。つまり、ALPINAというのは日常使いで快適性と超高性能を両立させることがメインな訳です。
夢のような時間を終えて。
試乗を終えてショールームに戻ってまいりましたが、体に色濃くD3の感触が刻み付けられました。エンジンの吹け上がり、乗り心地のよさ、恐ろしいまでの加速・・・なんだかその全てが浮世離れしていますが、こんなクルマが世の中に存在すること自体が驚きです。
B3もいいですが、やはりここに燃費の良さが加わると、このD3こそが、M3も含めて、私にとっては究極の3シリーズと言えるでしょう。
ALPINAというメーカーの存在自体に感謝したくなる、そんな試乗でした。
帰りに320dに乗ってみると。
B3の時も感じましたが、サスペンション自体は明らかに320dが柔らかく感じます。というか、ふにゃふにゃに感じます(笑)。というと、D3のサスペンションは硬かったんじゃないか、乗り心地もやっぱり320dの方がいいんじゃない?と思われるかもしれませんが、そうではないんですよね。
それはおそらく、320dのサスペンションが、ALPINAだったら初期ストロークの柔らかい部分を超えて踏ん張り出すところでも、柔らかいままなのでそう感じるのでしょう。街中でも姿勢変化が少なかったD3は明らかに乗り心地と安定性の両立という点で、320dは遠く及ばないところにあります。
でも、いつも通りの感想で恐縮なのですが、がっかりはしませんでした。これが、このゆったり加減も320dのいいところだよね、と。そう、全てがゆったりと感じられます。乗り心地も、加速も。
D3はスーパーサルーン、究極の3シリーズ、いや、究極のDセグメントサルーンです。ですが320dだって、かなりの完成度です。乗り味の違いはあれど、改めて愛おしくなりました。
では、今回はこの辺で失礼します。ありがとうございました。