40代子持ちのクルマ好きが、愛車のBMW 320dツーリングを評価するとともに、ちょっとだけ日々を楽しくするクルマのある生活の話題をお届けします。

「カルガモ走法」は何の為?!

日本で「カルガモ走法」と言えば、ETCゲートを前者にぴったりとくっついて突破し、料金の支払いを逃れるための悪質な手段として一時期もんだになったのをご記憶の方もいらっしゃると思います。オランダでは高速道路は無料なのですが、それでもカルガモ走法をよく見かけるんです。

とにかく車間が近い!

私がオランダに来て一番最初に驚いたのは、いえ、正直に申し上げましょう、ビビりまくってしまったのが、車間距離の近さでした。今でも怖いですが、とにかく近いです。通勤ラッシュの運転なんかは常に煽られている感じがして未だに落ち着きません。

特筆すべきは高速道路です。これはよくクルマ雑誌に書いてあることも多いのですが、やはり自動車好きにとって憧れの道(?)であるアウトバーンのことを書いてあることが多いですが、オランダでも事情は同じです。

つまり、高速道路で追越車線を走っていると段々と近付いて来るクルマがバックミラーいっぱいを占有するようになり、慌てて走行車線い避けるとここぞとばかりに追い越していく、というアレですね。アレですねというのも何ですが、私も新婚旅行でアウトバーンを走行した時にこの洗礼を浴びました。追い越して行くクルマもカルガモの親のように後ろに引き連れて行くことが多く、先頭車が走行車線に入り、また後ろの車が走行車線に入り、それでも物足りないクルマは追い越して行き、というのは、まるでツール・ド・フランスで隊列を組んで走っているチームの先頭交代を見ているようで面白いです。

なんて呑気なことを言っている場合ではないんです。

これ、実は追越車線でなくても起こるんですよ。前回記事で私は右から2番目車線(日本でいう第2走行車線)を走行する様にしている、と申し上げましたが、追越車線が空いているにも関わらず、徐々に徐々に後ろにくっついて来るクルマが多いです。やがては抜いて行くのですが、もっと遠くから抜いてくれよ!といつも思うくらいにくっついて来て本当に恐ろしいです。

必ずしも煽っているわけではない。

ですが、追越車線が空いている時でも起こるので、これは決して煽っているのではありません。というか、ヨーロッパでは普通のことなんですね。私に限らず、誰でもそうしていますしそうされています。

ベルギーではそうでもなかったですが、少なくともオランダとドイツは比較的速度制限を守るクルマが多いです。と行ってもオーバーはしているのですが、メーター誤差ではないかと思うくらいの微妙な速度差というのはどうしても存在します。その場合に、段々と近づいて来てしまうんですね。そして早く抜けばいいのにくっついて来る、と。もう、オランダ人のケチ倹約的な習性を反映して、前車を風除けにして燃費の向上を図っているのではないかと思うほどです。実際、トラックの後ろに止むを得ずくっついて連なってしまうと、我がメルセデスの大げさな瞬間燃費計が燃費が良化していることを示します。

そしてその速度を変えずに抜きにかかります。ですので、いつまでもミラーの死角にいて、今度は私が前を塞がれても車線変更ができなかったりすることもままあります(笑)。いや、笑い事ではないですね。最初は、こちらでのアグレッシブな運転を見て、安全の意識が低いのかと思いましたがそうではなさそうです。

ちなみにどのくらいアグレッシブかというと、必要車間と思って開けていると前に割り込まれるなんてザラで、5車線の高速道路で第4走行車線くらいを走っていたクルマが突然一番右の出口に向かって4車線またぎの車線変更をするなんてこともあります。まあ、これは一度しか見たことがありませんが、2車線またぎ・3車線またぎくらいはよく見ますね。

しかも、ウィンカーがあることを知らないかの様にウィンカーを出さなかったりします。これは曲がるときもそうなのですが、車線変更でも出さないクルマが多いのには閉口します。

でも、何だか信頼関係が出来上がっている?

そんなことをされても、誰も急ブレーキも踏みませんし、クラクションを鳴らすこともありません。日本でやったら最悪の場合、クラクションを鳴らすかパッシングをされて注意喚起をされるでしょう。

私はそこには奇妙な信頼関係がある様な気がします。

オランダの交通は、自転車があくまで中心ではありますが、歩車分離がよくできています。信号で自分のところが青になったら迷わずいかなければいけません。これは右左折の信号でも同じです。その時、進行方向の道路のクルマはもちろん、自転車用信号も歩行者用信号もほぼ必ず垢だと思って差し支えありません。都市部では例外ですが、右折(日本でいう左折)信号がある交差点ばかりで、非常に合理的に歩車分離がなされています。つまり、青の信号のところと交差する交通は必ず止められているんです。伝わりますかね?

例えば、私が日本でいつも思っていたのですが、例えば対向車線だけが右折できる場合、右折する方向から出て来る左折車って交差しないでいけますよね?どうしてこういうところで左折車線を作って左折を行かせる様にしないんだろう?歩行者用信号まで一緒に青にして左折で詰まっているのに?という場面、ありますよね?オランダでは、右折(くどい様ですが日本の左折に相当)の時は歩行者用信号は必ず赤です。しかも、十字路で、対向左折・こちらは右折という信号の出し方をする交差点もあります。

ですので、右左折で車線が詰まって渋滞というのはありません。

こうした「無言の合意事項」というのが高速道路を走行するクルマ同士でも結構できているんです。2車線またぎや3車線またぎでも、この相対速度であれば交差はしないと思えば普通に行かせますし、高速道路で基本的にブレーキを踏むことはないので後ろに迫っても大丈夫、という合意ができているんですよね。

「それはいい方に考えすぎじゃないの?」

というご意見もあるかもしれませんが、実際、高速道路でブレーキを踏んでいるクルマはほとんどいません。日本では高速道路でもちゃかちゃかブレーキランプを点灯させる方がいますが、それをやったら容赦無く抜かれるだけです。速いクルマは先へ、遅いクルマは抜かせる。この当たり前の合意事項が守られていると、いくら車間が詰まっていても事故は起きないんですね。実際、私は現在通勤で毎日首都アムステルダムの高速道路の環状線を走っていますが、こんなカオスな状態でも事故を見たことはありませんし、カーナビに事故情報が表示されていたこともありません。

首都高速ではいつもどこかで事故が起こっているのと比べると、これは驚くべきことだと思います。

オランダの方々、すみません。

最初は本当に、「カルガモ走法で燃費をよくしているんではなかろうか?!」と思っていました。いやー、オランダの方、ステレオタイプで判断してとんでもない誤解をして申し訳ありません。

日本がダメ、というわけではありませんし、こちらがクルマ社会として遥かに成熟しているという気も毛頭ありません。ただ、合意事項が守られているとこれほどまでにスムーズな交通ができるものなのか、というのは、私が日本にいる時からこうすればいいのに、と思って、時には当ブログで吐き出していたことが、私も想像していなかったレベルで実現されているということは言えると思います。

ただ、そうはいっても日本の高速道路は山間部を走りますし、きついカーブの手前で急に速度制限が下がってブレーキを踏まなければいけないことも多いでしょう。高規格の高速道路がありながら、メリハリ無くどこでも80km/h制限とか100km/h制限とかというのもドライバーには納得感がありません。もっとメリハリをつけ、なぜ速度制限があるのかドライバーが納得できる様な環境を作り、いやしくも免許を取得できる程度のドライバーであれば交通ルール以外の暗黙の合意事項を守って運転できる様な交通行政を行うことでしか、日本の実情にあった環境は作れないと思います。

ただ、だからと言って「新東名は130km/h制限に!」なんていうつもりもありません。当ブログでご紹介頻度が高いA2なんかはアムステルダムからユトレヒトまでは5車線で、見通しも非常によく線形もいいですが、日中は100km/h制限です。それが「交通量が多いから」という理由で納得感があれば守るクルマの方が圧倒的に多いんですよね。それでも違反する人はいます。そういう人を検挙すれば、取り締まりにも公平感が出てくるのではないでしょうか?

なんだか説教くさくなってしまいましたが、自分で考えていることはもっと単純で、「これがこっちの運転文化か。少しは理解できてきたかな。」なんて悦に入ってるだけです(笑)。そして、これを理解したことで、ヨーロッパ車特有のクルマの作りというのも理解できてきた気がします。

その話はまた次回に譲りますましょう。ですが、博識な当ブログの読者様は、既に私ごときが言わんとしていることなどお見通しだと思いますが・・・。

では、今回はこの辺で失礼します。ありがとうございました。