40代子持ちのクルマ好きが、愛車のBMW 320dツーリングを評価するとともに、ちょっとだけ日々を楽しくするクルマのある生活の話題をお届けします。

BMWの運転には一番いい季節になりつつありますね。

以前、記事の中でターボエンジンはこれからが本領発揮というようなことを申し上げて、何故なのかを言わないまま終わってしまいました。今回は、どうしてこれからの季節が現代のBMWの運転にはいい季節なのか、ご紹介しようと思います。

理由は「空気」

これはよく言われていますよね。

これから寒くなってくると、空気も冷たくなります。するとどうなるかというと、小学校や中学校で習ったように、同じ重さで比べると空気の体積が減るんです。逆にいうと、同じ体積なら、暑い時よりも空気は重くなります。

ということは、同じ体積で空気、もっというと燃焼に必要な酸素が多いということです。

すると、空気を吸入して、燃料と混ぜ合わせて爆発させるという工程を繰り返すエンジンにとっては、燃焼に必要な酸素を一度でたくさん取り込めるので爆発力が強くなるんですね。

実際、私の愛読誌のCGでは、新車が発表されるとテストで加速タイムなどを測ることがありますが、冬に計測すると時にメーカー公表値を上回る性能を発揮したりします。

もう一つ、これは季節は関係ありませんが、エンジンの性能に影響を与えるのが高度です。これは人間でも山の上では息が切れやすくなるのでわかりやすいと思いますが、クルマのエンジンも空気が薄い=酸素量が少ないということですので、爆発力が弱くなり、性能が落ちます。

現代のBMWは全てターボエンジン

ターボエンジンって、何?

ご存知の方が多いかもしれませんが、一応簡単にご説明しておきます。

一言で言うと、エンジンに、たくさんの空気を強制的に送り込んで爆発力を高くすることで出力の向上を狙ったものです。

・・・って簡単すぎますよね(笑)。

「ターボ」と俗に言っているのは「ターボチャージャー」のことです。排気ガスで「タービン」と呼ばれる羽を回すことで、自然に空気を吸い込むよりも多くの空気をエンジンに強制的に送り込む機構のことです。このように空気をたくさん送り込むことを「過給」するといいますが、同じく過給する機構で「スーパーチャージャー」と言うものもあります。こちらは排気ガスでタービンを回すのではなく、機械的に回す機構になっていまして、最近ではジャガーによく付いていますね。

ちなみに、ターボがついていないエンジンのことは「自然吸気」または「NA(Normal/Natural Aspiration)」といいます。「今時珍しいNAエンジン」などど言うように使います。

ターボっていつくらいからあるの?

ターボエンジンの歴史は意外と古く、すでに1905年には特許が取得されています。そして、ターボエンジンを積極的に活用としたのは、ルドルフ・ディーゼルという方。そうです。ディーゼルエンジンの生みの親ですね。

ですが、ターボエンジンといえば航空機用として盛んに使われたことの方が有名です。理由はもちろん、高空で空気が薄くなっても高出力を得るためです。

こう考えると、航空機エンジンメーカーであったBMWがターボエンジンに積極的なのは納得がいきますよね。実際、量産車として自動車に大々的に採用したのは、伝説の名車、BMW2002Turboが初めてです。その前にアメリカでも市販車に採用されていましたが、オプションという形でした。

F1の世界でもターボは使用されましたね。BMWももちろん採用していました。当時はブラバムBMWですか。ネルソン・ピケやリカルド・パトレーゼがいた頃です。

ターボって、スポーツカー用じゃないの?

かつてのターボは、スポーティモデルのフラッグシップたるハイパワー車にターボエンジン搭載車が設定されていたので、ある意味においては正しいです。

ですが、ターボはその特性を生かして今では省燃費エンジンに使われています。この間、何があったのでしょうか?

これまた一言で言ってしまうと、「直噴化でエンジンの冷却機能が強化され、高圧縮比を設定できるようになった」んです。何のこっちゃ?ですよね。

エンジンにとって一番いけないのは「ノッキング」と言う現象です。マニュアル車などで低回転なのに無理やり加速しようとすると「カリカリ」となりますよね。あれがノッキングです。つまり、エンジンが異常燃焼している状態なんですね。エンジンの内部の温度が上がりすぎて、設計上ではもうちょっと後のタイミングで爆発するはずなのに、それ以前に爆発が起こってしまう状態です。

ここで、「エンジンの内部の温度が上がりすぎて」といいましたが、ターボエンジンはハイパワーであるがゆえにエンジン内部はとても高温になります。ですので、あまり空気を圧縮しすぎると、さらに熱が上がってノッキングを起こしてしまうんです。

ですので、高性能NAエンジンの圧縮比が10とか11でも、ターボエンジンはせいぜい8とか9くらいまでしか圧縮比をあげられませんでした。

ちなみに、圧縮比というのはエンジンのピストンが空気と燃料が混ざった機体をどのくらいまで圧縮するかという指標ですが、圧縮比が10と言ったら10分の1まで圧縮するということです。これが高いほど、一般に効率は良くなり、低燃費・ハイパワーとなります。

従来のエンジンは、空気をエンジンに導く途中で燃料を噴射して、混合気の状態でエンジンは吸気していました。これをポート噴射といいます。現代のエンジンは吸気するのは空気だけで、シリンダー内に直接燃料が噴射されます。これが直噴エンジンですね。

直噴エンジンは、燃料自体がエンジンを冷やす役割を果たすので、圧縮比を高くできます。そしてこの特性がターボエンジンに大いに役立ち、高圧縮比のターボエンジンを実現させたんですね。

そしてこれを低燃費方向に振ると、従来では考えられなかったような高効率エンジンを作ることができるようになった、というわけです。

ディーゼルとターボエンジンは実は相性抜群!

ディーゼルエンジンは実は自然吸気ですと低速トルクが薄いです。そもそもルドルフ・ディーゼルがターボで過給しようと試みたのも、ディーゼルエンジンの低速トルクの薄さを補おうとしたのがきっかけでした。

ターボは排気ガスでタービンを回すために、排気ガス流量が十分ではない低回転域ではどうしてもタービンを回しにくいです。ところがディーゼルは高圧縮による自然着火のため、最初から排気ガスが勢いよく出るんですね。ですのでタービンは回りやすくなります。

BMWが採用してる技術「ツインスクロールターボ」というのは、この排気ガスの通り道を2つにしてタービンまで導くことで、低回転域からでもタービンを回すための技術です。

また320dなどに採用されている「可変ジオメトリーターボ」とは、排気ガスの通り道を広くしたり狭くしたりすることでタービンに当てる排気ガスの流れの速さを制御して、特に低回転域でのターボのレスポンスの良さを狙っています。

こうすることでディーゼルの低回転域でのトルクの薄さは影を潜め、逆に低回転域から凄まじい力強さを持つエンジンに変身するんですね。

つまり、寒くなるとエンジンの爆発力は強まる。ターボエンジンはなおさら。

ちょっと難しい話をできるだけ簡潔にご説明しましたが、このようなターボエンジン、キーワードはやっぱり「空気」でしたよね。

自然空気よりも大量の空気を強制的にエンジンへ送り込むターボエンジンでは、元々の空気の中に含まれる酸素量が増えると、自然吸気エンジンよりも影響が大きくて、より効率よくなるんです。

つまり、現代のBMWにとっては、これから空気が冷たくなり、かつ湿気も少ないので単位体積あたりの酸素量が増えるこれから冬にかけての季節は、1年で最も燃費がよく、かつパワーが出る時期となります。

こんなこと知っていたら・・・遠出したくなりますよね。今年度は曜日の並びがが悪くて中々連休にはなりませんが、私もなんとか週末に遠出ができるように画策しています。珍しく、計画的に(笑)。

では、今回はこの辺で失礼します。ありがとうございました。