40代子持ちのクルマ好きが、愛車のBMW 320dツーリングを評価するとともに、ちょっとだけ日々を楽しくするクルマのある生活の話題をお届けします。

BMWの「衝突回避・被害軽減ブレーキ」は「ちゃんと止まる」のか?

最近、テスラの事故に端を発していわゆる「自動ブレーキ」に関しての記事がネット上に非常に多いです。ですが読んでいると思うところもあり、私の考えを述べようと思います。

いつでも止まるわけではありません。

BMWでは「衝突回避・被害軽減ブレーキ」という名前で搭載されています。こうしたデバイスに火がついたのはボルボのシティセーフやスバルのアイサイトであることは疑いようもありませんが、どのメーカーも「自動ブレーキ」とは謳っていません。

こうしたデバイスは大抵の場合、BMWで言うところのACC(アクティブ・クルーズ・コントロール)、つまり前車追従デバイスと一緒になっていますよね。

何を当たり前のことを、とお思いかもしれませんが、個人的にはこれが重要だと思っています。

過去に私はACCに前車をうまく認識させるコツを当ブログで記事にしました。

BMWのACCのレーダーにうまく前車を捉えさせる方法

ここで、「同方向」「同じような速度」の場合に非常に認識しやすい、と申し上げました。つまり、すでに停止している前車に後方から迫っていっても自動でブレーキは中々踏みませんよ、と。いや、相当近寄ればブレーキがかかるかもしれませんが、公道で実験するわけにもいきませんし、JNCAPのテスト動画をYouTubeで見ても、そのような場合は追突しているクルマが多いですね。

何が言いたいのかというと、あくまで名前の通り衝突回避(の可能性を高め)、被害を軽減することができるような減速デバイスなんです。決して「自動ブレーキ」などではありません。

ここで「可能性を高め」と言いましたが、それは最後に停止するなりハンドルで衝突を回避するなりの操作をするのはドライバー自身がやらなければいけないからです。

でも、ちゃんと止まる時もあるよ?むしろ止まってほしくないところで止まる時があるけど?

そうですね。一時期ネット上の某巨大掲示板だったと思いますが、この衝突回避・被害軽減ブレーキの機能で、「何もない」ところで急ブレーキがかかったとして、明らかに不具合である、不具合じゃないとしたら欠陥システムであるという主張をされる方がいらっしゃいました。後続車に追突されたらどうするのか、非常に危険である、とのご認識で、不具合でディーラーに問い合わせている、と。

確かに、後続車に追突される危険があるのはその通りですし、お気持ちはお察ししますが、私は同意できませんでした。これは恐らく、仕様通りの動作で誤動作などではありません。また、だからといって、このデバイスは欠陥でもなんでもありません。

この方はその時の動画もアップされていましたが、その時自転車が道路の左端を走っていました。私にしてみれば、「ああ、これに反応したんだな」と。私も実際に同じような状況で作動するのを経験していますが、スルーしています。

この方と私の違いは何かというと、私は「新しいデバイスに期待しすぎない」ということです(笑)。

カーナビの黎明期、初めてホンダのフラッグシップセダンのレジェンドに「カーナビのようなもの」が搭載された時だってそうです。実物を目で見たことはありませんが、その時の自動車雑誌の記事の結論は「現状では全く使い物にならない」というものでした。大体、確か地図は自分で透明なシートに書き写していって、モニターにセットするんだったと記憶しています。そしてクルマの移動をジャイロスコープで感知して自車を示す点が動き、地図上で現在地を示す、というものでしたが、ご想像通り自車位置もズレまくりだったそうです。

まあ、比べるのも失礼かもしれませんが、これに比べたら「衝突回避・被害軽減ブレーキ」は遥かにマシですよ。だって、きちんと動作しますから。

クセがあるのは確かですが、正しい理解が必要です。

私も、道路の左端を走行する自転車を急に認識しての急減速や、大きくカーブしている住宅街の道路などで、方向車がカーブの進行方向ではなくクルマの正面方向の歩道にいるときに、その歩行者を検知してABSが働くほどの急ブレーキを勝手にかけられることがありました。後続車はいない時でしたが、一体何事かと驚いたものです。が、逆に「おお先進技術が働いている!でも違うけどねー」とスルーしていました。

要するに、クルマは運転者が「これからすること」まで加味して判断しているわけではないんですよ。同様に、歩道の歩行者や路肩を走る自転車などの周囲の状況がどのように変化していくのかも予測して判断はしていません。ですから、カーブで右に行くと運転者は思っていても、クルマの方ではノーズが向いている方向に人がいるので緊急ブレーキをかける、ということになるわけです。

予測や判断ができないからこそ、メーカーとしては保守的に設定せざるを得ず、その結果が「誤動作」で、逆にACCの場合に停止しないのは、現状でのセンサーの限界だといえるでしょう。

ですが、正常に作動するシーンがあるのは確かです。私は実際に遭遇したことはありませんが、こうした誤動作を見ていると、「認知・判断」ができないシステムの限界を感じます。

じゃあ、そんな不完全なシステムを商品として売り出すのは間違っている!とおっしゃる方もいるかもしれません。ですが、繰り返しになりますが、カーナビの例を見ても黎明期の革新的なデバイスというのはどこのクルマメーカーでもそんなものです。

運転においては、危険を予測して周囲の状況から判断し、最終操作を決めるのは人間なんですよ。ですから自動運転者にはAI、人工知能が必要で、各メーカーがどのIT企業と提携するかで鎬を削っているんです。

そろそろ「自動ブレーキ」って呼ぶのやめませんか?

世間一般ではもう「自動ブレーキ」が市民権を得てしまっているので当ブログでも何度か使用してしまっていますが、私は前から苦々しく思っていました。私が経験した範囲でも、BMWの衝突回避・被害軽減ブレーキは、優れたデバイスであることを認めつつも、「自動ブレーキ」などと呼べるようなシロモノではない、と言わざるを得ません。これはBMWに限らず、どこのメーカーのものだってそうです。

ただ、前車追従及び緊急時の被害軽減を狙ったデバイスということであれば、他メーカーと比べてもBMWのものは非常に優秀な部類に入ると思います。

なんだか、ABSが出た時と似ていますね。「タイヤがロックされないから、パニックブレーキを踏んでもハンドルで進行方向を変えられる」のが利点のはずなのに、「短い距離で止まれる」と誤解されていました。まさか当ブログをお読みいただいている方の中にはいないと思いますが、未だにそう思っている方がいるのが現実なんです。

「自動ブレーキ」ではなく、「補助緊急ブレーキ」とか別の呼び名にしないと同種の誤解は解けないと思います。

ただ、幸い、と言っても変な幸いですが、BMWのこのデバイス、ミリ波レーダと単眼カメラを駆使した最高峰のものと言ってもいいくらいの技術なのに、あまりBMWブランドのアピールポイントとして世間的に認識されていないので、あまりBMWに対しては文句が言われないという・・・。

 

結論 どのメーカーもそうですが、現状ではまだまだこんなもの。

こんなこと言ってますが、個人的にはそれでいいと思っています。これが「誤動作」したことで本当に追突されたとしたら、一義的には後続車が必要な車間距離を取っていないのが悪いのであり、決してデバイスが悪いのではありません。

今後自動運転を実現していく過程でより洗練されたものになっていくことはもちろんですが、あくまでも運転者が判断と最後の操作をしなければ、緊急事態の回避はできないということを予め知っておけば、「自動ブレーキ」という呼び名から生じる誤解をせずに済むでしょう。

運転免許を取る時に習いましたよね。危険回避には予測をして判断をしなければいけないって。今はどのように教わるのか知りませんが、人ってクルマの運転をしている時って、五感のすべてから得られる膨大な情報をもとに予測と判断をしているのです。そして、この予測と判断をいかに素早く、かつ適切にするかが危険回避に最も重要なプロセスですよね。

ほら、これを改めて考えてみれば、いかに高性能なスパコンやロボットでも自分で判断を下すものって、今はないですよね?それだけをもってしても、「自動ブレーキ」という呼び名がいかにオーバースペックな呼び方であるかわかろうというものです。

では、今回はこの辺で失礼します。ありがとうございました。