40代子持ちのクルマ好きが、愛車のBMW 320dツーリングを評価するとともに、ちょっとだけ日々を楽しくするクルマのある生活の話題をお届けします。

BMWとタワーパーキングの意外な関係。

BMW

「BMWは日本での使い勝手が良い」。私が当ブログで繰り返し申し上げていることですが、ただ単に、主力車種が4ドアだとか、BMWの屋台骨である3シリーズのボディサイズが適正だとか、それだけの話ではありません。クルマでお出かけしたら、必ず駐車場に止めなければいけないのですが、ここで選択肢が多いかどうかって、結構重要なんですよね。

日本の標準的なタワーパーキングの大きさ

日本では、特に都市部では圧倒的にタワーパーキングの方が多いと思います。ユッカリトスペースをとった平面駐車場もあるにはありますが、マンション住まいの方ですと、ご自宅の駐車場がタワーパーキングという方も多いでしょう。そして、それが故に購入できる車種に制限を受けることがままありますよね。

卑近な例で恐縮ですが、私の同僚で、一時期メルセデスのCクラスかBMWの3シリーズかで悩んでいる方がいました。予算的にはメルセデスのEクラスの中古も視野に入れていましたので、絞り込めていない感があったのですが、まあ、クルマに詳しいということで私に相談されたんです。

相談どころか、ディーラーに一緒にきて欲しいとまで言われる始末。ですがまあ、私が断るわけもありませんよね(笑)。その同僚に同行してメルセデスのディーラーとBMWのディーラーを回りました。その当時乗っていたF30の320iで(笑)。

当時まだ新しかった320iでメルセデスのディーラーに乗り込むというのも中々挑発的な行動だったと思います。だって、明らかに乗り換え目的じゃないじゃないですか(笑)。本当に出たての頃だったので、メルセデスディーラーの方が何人か出てらっしゃって、しげしげと私の320iを観察し始める始末(笑)。恥ずかしいったらありませんでした。

ま、それはともかく、まずはCクラスに試乗し、さらに予算の範囲に見合うEクラスも試乗していました。そうなると・・・当然Eクラスの方がよく見えますよね。その同僚もEクラスを買う気満々でした。ですが、彼が放った一言が、まさに「日本の駐車場事情」を如実に表していたんです。

「Eクラスの幅だとウチの立体駐車場、実はちょっとだけオーバーするんだよな・・・。管理会社はOKって言ってるんだけど、ギリギリすぎてきっと嫁さんが車庫入れできない・・・。」

まあ、彼の場合はそもそも幅が規定以上なのに管理会社がOKを出してくれただけマシです。

先日M4を試乗した後も、ディーラーの営業さんと話していた中でM4の幅の話になり、

「まあ、幅1,800mmの駐車場だときついかもしれませんが、入らないこともないかもしれないんですけど、管理会社には怒られちゃうかもしれませんね。まあ、それ以前にタイヤの幅が広すぎて入らないかもしれませんけど。」

こうした事情があると、憧れのクルマを入手するために平置きの駐車場を探して契約しなければいけなかったりして維持費が重くのしかかってくるので、ハードルが高くなる、ということがありますよね。

ちなみに、日本のタワーパーキングの標準的な大きさというと、幅は1,800mm以下、高さは1,550mm以下というのがよく言われます。少し大きいと幅が1,850mm、高さも1,600mmとかになりますが、大体こんなところです。これを基準に考えると、実は輸入車って意外と入らないサイズばっかりなんですよ。

例えばアウディA4。幅が1,840mmですので、標準サイズの方はアウトです。メルセデスのCクラスも1,810mmなのでなんとかなりそうですが、表向きはアウト。

以外ですよね。日本で使いやすそうなサイズのクルマでも軒並みダメなんです。

BMWは真面目に(?)ローカライズ。

実はBMWの3シリーズ、今ではそこまで声高に宣伝していませんが、発表当初は「大抵のタワーパーキングに入る」ことをウリにしていたことをご記憶の方もいらっしゃるでしょう。幅はジャスト1,800mm。なんとも計ったかのように合わせてきましたが、もちろん「計って」合わせているんです。

本国仕様では1,810mmほどあります。これはE90の時からそうなのですが、E90前期型をそのままの幅で売り出した時、「タワーパーキングに入れられない」という声が相次いだそうなんです。アウディやCクラスだってそうであるはずなのになぜか3シリーズにだけは要求が厳しいという(笑)。いや、もしかしたらアウディやメルセデスでもそのような声はあるのだと思いますが、本国が対処してくれないとどうしようもないですからね。

そこで動いたのはBMWだけです。E90の後期型から、日本仕様だけフロントドアのドアハンドルを薄いタイプに変えて幅を1,800mmに抑えるという涙ぐましい努力をして要望に答えてくれまして、それはF30/ F31にも引き継がれています。

これは・・・やはりメルセデスは元々がSクラスのイメージが強く、BMWは3シリーズのイメージが日本では強いですから、きっと、「コンパクトなはずのBMWがタワーパーキングに入らないとは何事だ!」という意識があった、かどうかは定かではありませんが・・・まあ、当たらずとも遠からずではないでしょうか?

そしてBMWはこの件がトラウマになったのか、あるいは「日本ではタワーパーキングに入らないと売れないのか!」と悟ったのかどうかは知りませんが、明らかに購入層がマンション住まいのファミリー層を想定しているようなクルマでは非常に重視するようになるんです。

まずは2シリーズアクティブツアラー。これは本国ではオプションのスポーツサスを日本仕様では標準採用することで全高を1,550mmに抑えることで、一般的なタワーパーキングに収まるようにローカライズしています。ちなみに本国仕様では1,555mm!なんとたったの5mmオーバーなんですよね。

そして、BMWが本気で電気自動車を普及させようと思ったんだなあと私が個人的に強く思ったのがi3です。i3、従来のBMWらしからぬデザインですよね?とはいえ、キドニーグリルはありますし・・・と見ていくと、BMWが流行らせた、あの天井のアンテナ、「シャークフィン・アンテナ」がないんですよね。何もここまで省略というか、無くさなくてもいいだろう・・・と思っていたらこれも涙ぐましい話なんです。そう、全高を1,550mmに抑えるために、スポーツサスを装備して車高を下げるだけでは足りなかったので、シャークフィンアンテナを取っ払って、折りたたみ式の短いアンテナだけにしているんですよ。ちなみに本国仕様では1,598mm、最近発表されたi3sで1,590mmです。これは・・・だいぶ縮めましたよね(笑)。そして本国仕様のi3は、短いアンテナも付いていますが(折りたたみ式がどうかは不明)、やはりシャークフィンアンテナも装備しています。

ちょっとよくわかるショットがなかったのですが・・・シャークフィンアンテナ、天井に付いていますでしょ?

タワーパーキングのサイズは、日本車は必ず意識している!

これは日本のメーカーなんですから当然ですよね。そもそも、オデッセイが数年前に低床化技術を開発したのも全高を抑えて走行安定性を高めるだけでなく、タワーパーキングを意識してのことです。

私がBMWってすごいと思うのは、こうした日本車と同じ土俵に上がって戦う気でいることです。輸入車というのは、ある程度ブランド力でなんとかなる部分が大きいので、そういう意味では日本車と同じ土俵で戦う必要って必ずしもないんですよね。まあ、右ハンドル化だけは必須だと思いますけど、そこは同じ右ハンドルの国、例えばイギリスがあるからヨーロッパのメーカーであれば元々右ハンドルも作っているところが多いでしょうからそう難しい話ではありませんよね。

ですが、BMWは「日本での使い勝手とはなにか」を突き詰めて、大雑把にいえば「大きすぎないボディサイズに最大の室内空間」がキーであり、具体的には「タワーパーキングに入るサイズ」がネックとなることを学び、敢然と日本車に対して戦いを挑んでいるわけです。

これは日本車が海外で行なっているのと同じ戦略でもあるでしょう。ヨーロッパでは小型車を作って売り込み、アメリカでは牽引能力のあるピックアップトラックやフルサイズSUVなど、市場で求められるものを提供する。これが日本車が世界中で試乗を席巻してきた戦略です。

BMWはこれをそっくりそのままではありませんが、できる範囲内で取り入れて日本市場を攻略しているということですね。

ただこれってすごいことでもなんでもありません。個人的な見解ですが、商売の基本だったりするのではないでしょうか?左ハンドルしか用意しないアメリカ車が、「日本で売れない。不公平だ!」といくら叫んでも、日本市場の反応は非常に冷たいものに終始します。ヨーロッパメーカーに関しては、右ハンドルは用意しましたが、どうしても日本車よりも幅が広い傾向があり市街地での取り回しや駐車場所に困るのが玉に瑕、というのは自動車好きなら先刻ご承知の事実です。

こういうBMWの涙ぐましい(?)努力から学ぶメーカーが出てきても良いのではないかと思いますが・・・それはBMWが日本市場でぶっちぎりのシェアを得なければ説得力がないんでしょうね。

これからもこうした日本市場をよく理解したローカライズ、特にユーザーの利便性アップがわかりやすいものはどんどん取り入れて行ってもらいたいものです。

では、今回はこの辺で失礼します。ありがとうございました。