40代子持ちのクルマ好きが、愛車のBMW 320dツーリングを評価するとともに、ちょっとだけ日々を楽しくするクルマのある生活の話題をお届けします。

BMWの「4気筒+ターボエンジン」に官能性はあるのか?

BMWといえば6気筒じゃないと!とお考えの方、多いと思います。それは緻密な機械が粛々と動いていることを感じる気持ち良さであり、吹け上がりの良さが伝説的に語り継がれているためですが、昨今のBMWの主力車種は4気筒です。BMWは官能性を捨て去ったのでしょうか?雨のそぼ降る秋分の日の東京都内の市街地を走りながら考えました。

直列6気筒という完全バランスエンジン

BMWに限らず一般的な話として、直列6気筒エンジンはその構造自体で振動が出ないようになっており、4気筒やV8のようにエンジンの振動を打ち消すバランサーシャフトが必要なく、雑味のない吹け上がりが気持ちいいです。

私が初めて体験した直列6気筒エンジンは、父が乗っていたトヨタマーク2の2Lエンジンでした。初めて乗った時は、なんとも重々しくすら感じる感触に大変感動したのを覚えています。

そして、自分のクルマとしてはE90の323iの2.5Lエンジンが初めてでした。これはもう、さすがBMWと唸ってしまうほど気持ちよかったですね。それまでE90の320iに乗っていたのですが、感触は全く違っていて、なんというか、ねっとりした感覚の気持ちいい吹け上がりでした。

BMWの直列4気筒エンジン

私もBMWに実際に乗る前までは、6気筒でないBMWなんて意味がない!という偏った考え方をしておりました。

ですが予算の都合上、E90の320iがやっとでしたので、とりあえず試乗してみたんですね。この時の試乗のことは今でも忘れません。何せあの憧れのBMWを初めて自分の手で運転している!しかも一番好きな3シリーズ!ということでかなり舞い上がっていました。

ですが、エンジンの感触だけは自分の偏見もあったので厳しくチェックしなければと思っていたので神経を研ぎ澄ませてみると、今まで私が体験してきた4気筒エンジンのガサツな感触とはまるで違う、モーターのようにスムーズなエンジンだったんですね。

音も4気筒にしては若干甲高く、どの回転域でもあくまでもスムーズ。踏めば踏むほど無粋な振動を発することなく回転を上げていくエンジンに、Bayerische Motoren Werkeの意地を感じたものです。

そこには紛れもなく、他では味わえない官能性がありました。

直噴ターボエンジンになる前のBMWエンジンの特徴

6気筒にも4気筒にも共通する特徴、それは私はズバリ、「繊細さ」にあると思っています。

決して線が細いわけではありません。現在の最新技術を投入した直噴ターボエンジンとはトルクの太さは全く違いますが、当時としてはそれなりにフラットなトルクカーブでした。

それでいて、力強く車を押し出していくような感じはありません。むしろ、ストール比の大きなATだったこともあり、エンジンの回転が上がるわりには加速がじれったい感じがありました。これはE90の非直噴エンジンはみなそうです。320iの2Lエンジンは、パワー・トルクとも日本車の2Lエンジンが軒並み170psとか180psという最高出力を誇る中、たったの150ps。0-100km/h加速も10秒前後かかっており、とてもではありませんが、「速さ」という点では日本車のライバルたちには太刀打ちできませんでした。

323iの2.5Lエンジンも同じです。こちらには高性能バージョンの325iがありましたが、それですら最高出力は210ps、323iに至っては190psです。日本車で2.5Lというと、その頃は210ー230psくらいは出ている中で、ですよ。

ですがモーターのように吹け上がっていくエンジンがとにかく気持ちよく、加速が遅いのは気になりませんでした。まずはエンジンの回転が上がっていき、そのあとに速度が穏やかに上がっていくという、ある種の線の細さすら感じさせる繊細さが魅力でした。

最新の直噴4気筒ターボは低速トルク重視

直噴4気筒ターボエンジンは、燃費を良くする関係からか、低速トルクを重視しており、高回転まで回さなくても十分な加速力を発揮します。それは今や、日本車の加速をしのぐほどの高性能ぶりです。ATもロスが少ないタイプに変更され、ダイレクト感があるものとなりました。

その結果、個人的には一昔前のBMWの魅力だった「繊細さ」というものは薄れていると感じます。そう、完全になくなっているわけではないんですね。BMW社内でも、そうしたBMWの魅力の一つを損ないたくないと考えていたテストドライバーがいて、あえてそうした味わいを残しているのかもしれません。

ですが、今では昔からは考えられないほど低回転から力強く押し出す特性になっています。この点に関しては、BMW的には効率を求めてかなりの方向転換をしたと感じざるを得ません。

 では気持ちいいエンジンではないのか?

結論から言うと、私は「今までと違った力強さが官能性を提供している」と思っています。これはもちろんディーゼルに関しても、です。

BMWが方向転換をしたのは環境対応という時代の要請に合わせてであるということです。従って、私がActivehybrid3に乗った経験を改めて思い返してもても、6気筒ならではの官能性というのはありましたが、従来のBMWの繊細な感触はあまり感じられませんでした。むしろモーターのアシストも加えて、低回転からとんでもない力強さで押し出していく印象の方が強かったですね。

Activehybrid3、なんだかんだで気に入っています。

以前も当ブログで書きましたが、メルセデスにしてもBMWにしても、6気筒エンジンというのはモジュラーユニット化したエンジンの排気量調整以上の意味はなくなってしまうのでしょうね。ですがそこはBMW、やはりエンジンのスムーズさに欠けては一日の長があり、力強くもガサツな感触を感じさせないのはさすがです。

直列6気筒復権の日はくるのか?

過激なことを言うようですが、過去のBMWの6気筒の回り方を今の6気筒に求めても、従来の繊細な官能性はないと思っていいでしょう。

昔からのピュアなBMWファンの方が主張する不満点は、正にこの点にあるのだと思います。

「官能的」ではなくても。

そうはいっても、現在の私の愛車320dツーリングは私が今まで乗ってきたクルマの中では群を抜いて完成度の高いクルマだと思います。

スムーズに躾けたディーゼルによる力強い加速というのは、正に方向転換したBMWが追い求めるこれからのドライビングプレジャー、「Freude am Fahren」を色濃く具現しているのではないでしょうか?

帰宅して車庫入れして自宅に入るときに、思わず振り返って我が愛車を眺め、大事に長く乗り続けていきたいものだと改めて思いました。

では、今回はこの辺で失礼します。ありがとうございました。